部門別ユースケース

採用候補者はAIで会社を調べている|人事・採用広報のためのAI認知管理

2026-08-02読了目安 20

著者: Vaipm(AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定している)

この記事のポイント

就職活動でのAI利用は84.9%に達し、企業側の実感も30.6%へ上昇しました。しかし「学生がAIを使っている」と知ることと、自社がAI上でどう説明されているかを測ることは別問題です。人事・採用広報が押さえるべき実態データ、AIが参照する情報源、誤情報への向き合い方、実務設計までを一次データで解説します。

結論サマリー

候補者はAIを使って企業を調べています。マイナビの調査では、2027年卒の学生で就職活動にAIを利用した割合は84.9%に達しました。企業側も気づいていないわけではありません。同じくマイナビの調査で、学生の生成AI利用に実感があると回答した企業は30.6%と前年から上昇しています。

問題はその先です。「学生がAIを使っている」と認識することと、「自社がAI上でどう説明されているか」を測ることは別のことです。前者は業界調査で分かりますが、後者は自社で測るしかありません。認識ギャップではなく、この測定ギャップが本記事の主題です。

候補者はAIの回答を鵜呑みにしていません。同調査でAI利用経験のある学生1,184名のうち「AIの提案をほぼそのまま自分の判断として利用する」は2.9%、最多は「判断材料の一つとして考慮する」68.7%でした。しかし判断材料である以上、AIが示した枠組みは検討の入口になります。

だからこそ、自社がAI上で何と言われているかを継続的に把握する必要があります。本記事は、そのための実務ガイドです。

対象読者

事業会社の人事・採用担当者、採用広報の実務者、CHRO・人事責任者を想定しています。学生・求職者向けのAI活用術ではありません。「候補者がAIで自社を調べている」という前提に立ったとき、企業側が何を把握し、何を整備すべきかを扱います。

1. 何が起きているか — 学生も企業も動いた。しかし測られていないものがある

1.1 就職活動でのAI利用は84.9%に達した

マイナビが2026年4月25日から30日にかけて実施した「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」(有効回答1,258名、2027年3月卒業予定の全国の大学生・大学院生が対象。マイナビ2027会員へのWEB DM配信によるインターネット調査)によれば、就職活動でAIを利用したことのある学生は84.9%でした。

卒業年次就職活動でのAI利用経験あり有効回答数
2024年卒18.4%5,062名
2025年卒37.2%4,224名
2026年卒66.6%1,385名
2027年卒84.9%1,258名

出典: マイナビ「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」(2026年5月26日公表)

3年間で18.4%から84.9%へ。すでに「一部の学生」の話ではありません。

1.2 内訳を正確に読む

この84.9%は就職活動でのAI利用全般であり、用途は多岐にわたります。同調査で就職活動にAIを使ったと回答した1,076名に利用方法を尋ねた結果(複数回答)は以下の通りです。分母は全回答1,258名ではない点にご注意ください。

利用方法(AI利用経験者1,076名中)2027年卒2026年卒(n=928)
ESの推敲71.8%68.8%
面接対策56.2%36.6%
ESの作成55.0%40.8%
自己分析54.2%38.2%
業界研究52.2%35.5%
仕事研究35.8%23.9%
企業・仕事検索26.3%16.2%

出典: 同上(n=1,076/前年n=928、いずれも複数回答)

最多はESの推敲で、文章作成支援が中心である点は変わりません。しかし人事が注目すべきは下の3行です。AI利用経験者のうち業界研究に使った割合は1年で35.5%から52.2%へ、企業・仕事検索は16.2%から26.3%へ伸び、「エントリーする企業や職種を探す」用途にAIを使う学生がAI利用経験者の4人に1人を超えました。

ただし「業界研究」は必ずしも特定企業を名指しで調べることを意味せず、業界全体の動向を調べる用途も含まれます。

同調査では意思決定場面での利用も尋ねており、「エントリーする企業・職種の候補の検討」24.5%、「選考受験企業の決定」9.4%、「選考辞退企業の決定」8.2%でした(いずれも1,076名中・複数回答)。

1.3 企業側の実感も上昇している

では企業側はどうでしょうか。

マイナビが2025年9月26日に公表した『2025年度(2026年卒)新卒採用・就職戦線総括』によれば、学生が就職活動に生成AIを利用している実感があると回答した企業は30.6%と3割を超えました。2025年卒調査時点の12.3%から上昇しています。

企業側の認識は追いついてきています。「企業は学生のAI利用に気づいていない」という前提は、少なくとも2026年卒時点では成立しません。

なお、学生側の84.9%(2027年卒・2026年調査)と企業側の30.6%(2026年卒・2025年調査)は、調査年・設問・母集団のいずれも異なります。単純に差し引いて「ギャップは54.3ポイント」と読むことはできません。また2027年卒の企業調査で、同一設問による継続比較ができる公表値は確認できませんでした。

1.4 認識ギャップではなく、測定ギャップ

企業が把握しているのは「学生がAIを使っているらしい」という現象の認識です。しかし採用実務で必要なのは、自社がAI上でどう説明されているかという具体的な情報です。前者は業界調査で分かりますが、後者はどの調査にも載っていません。自社で測るしかないからです。

「学生のAI利用に気づいている」ことは出発点であって、到達点ではありません。

2. 候補者はAIを鵜呑みにしない。しかし判断材料にはなる

2.1 「そのまま信じる」層はごく少数

「学生がAIを鵜呑みにしている」という論調を見かけますが、データはそれを支持していません。前掲マイナビ調査で、AI利用経験のある学生1,184名に「ご自身の意思決定や行動を決める際、AIのアウトプットはどの程度影響していますか」と尋ねた結果は以下の通りです。

回答(AI利用経験者1,184名中)割合
AIの提案をほぼそのまま自分の判断として利用する・行動する2.9%
判断を大きく左右する7.4%
判断材料の一つとして考慮する68.7%
参考程度に見るが、判断にはほとんど影響しない15.2%
全く参考にしていない5.8%

出典: 同上(n=1,184)

「ほぼそのまま利用する」はわずか2.9%。同調査では「AIの回答が参考になる・共感できると感じるか」を0〜100%で尋ねた設問の平均が51.2%でした。過信も不信もない中庸な評価です。

2.2 相談経験者では、影響を認識する割合が高い

同じ調査の別設問では、異なる側面が見えます。

AIに就職活動の悩みを相談した経験がある576名に「相談した結果、AIからの回答はあなたの判断や行動にどの程度影響を与えましたか」と尋ねたところ、「とても影響した」13.8%、「少し影響した」64.7%で、合計78.5%が「影響した」と回答しました。

ただし、この78.5%と前節の数値は母集団も質問形式も異なるため、単純比較はできません。前節は全AI利用経験者1,184名に一般的な影響度を尋ねたもの、こちらは実際に相談した576名に相談後の影響を振り返らせたものです。相談するほど関与した層で影響認識が高くなるのは自然であり、これをもって心理的な逆説が実証されたわけではありません。

両者を無理なく読むなら、提案をほぼそのまま採用する層は少ない一方、実際に相談した層の多くは何らかの影響を認識している——「丸投げではないが判断材料にはなる」という理解と整合します。

2.3 第一印象への影響と、その解釈の限界

ナイル株式会社が2026年3月25日から30日に実施した調査(2026年卒・2027年卒・2028年卒の就職活動をした、またはしている学生419名)では、「生成AIが提示した企業の要約(特徴・強み・弱み)は、その企業の第一印象にどの程度影響しますか」という問いに対し、「参考程度」が65.6%で最多だった一方、「大きな影響がある」も19.4%と約2割を占めました。同調査では、生成AIで企業を調べたあとに公式サイトや採用ページで事実確認をする学生が約9割(「必ず確認する」32.3%+「だいたい確認する」56.1%)に達しています。

ナイル株式会社はLLMOコンサルティングを提供する事業者であり、当事者による調査です(出典: ナイルのSEO相談室調べ/https://www.seohacks.net/column/30459/)。

ここから「検証しても第一印象が残る」と結論づけたくなりますが、それは本記事で参照した調査からは実証できません。いずれも一時点の意識調査であり、縦断調査ではないためです。最初の印象が確認作業を経ても独立して残存したのか、確認によって懸念が裏付けられた結果なのかは判別できません。

実務上言えるのは、AIの回答が候補者の検討過程に入り込んでいること、そして企業側にはその内容が見えていないことまでです。

3. AIは自社について何を語っているのか

この章のデータは中途転職者が対象です。新卒学生ではありません。前章までの新卒データと連続する一つの傾向として読まないでください。

3.1 調査の性質

株式会社LANYが2026年4月1日から3日に実施した「採用プロセスにおけるAIが引き起こす『サイレント辞退』実態調査」(有効回答111名)の対象は、直近1年以内に転職活動を行い、その過程でChatGPT・Gemini・Perplexity等の対話型生成AIで特定の企業情報を調べた経験がある25〜45歳です。

「AIで企業を調べた層」に母集団が限定され、サンプルサイズも111名と小さいため、以下の数値は参考値です。求職者全体に外挿することはできません。またLANY社は採用領域のLLMO支援を提供する事業者であり、当事者による調査です。

3.2 ネガティブ情報の内訳

AIに企業について聞いた際にネガティブな印象を持つ情報を目にした経験が「ある」と答えたのは92.8%(n=111)。その内訳(「ある」と答えた103名への複数回答)は次の通りでした。

目にしたネガティブ情報(103名中・複数回答)割合
残業が多い・ワークライフバランスが悪いという情報63.1%
社風や職場の人間関係に関するネガティブな情報35.9%
給与水準が低い・待遇面が良くないという情報30.1%
離職率が高い・人の入れ替わりが激しいという情報27.2%
情報が抽象的で中身がなく、企業の実態が伝わらなかった17.5%

出典: 株式会社LANY「採用プロセスにおけるAIが引き起こす『サイレント辞退』実態調査」(https://www.lany.co.jp/lany-llmo-lab/job-candidate-ghosting

上位は労働時間、社風、給与、離職率です。いずれも採用サイトのFAQで先回りできる論点であり、多くの企業が定量情報の公開を避けがちな領域でもあります。

「情報が抽象的で中身がなく、企業の実態が伝わらなかった」17.5%も見逃せません。ネガティブな事実が書かれていたのではなく、何も分からなかったことがネガティブに作用したケースです。

3.3 辞退経験者が最も多く挙げたのは「他社との比較」

同調査で、AI情報をきっかけに応募取りやめ・選考辞退をした経験が「ある」と答えたのは87.4%(n=111)。その97名への複数回答で、辞退の引き金となったAI情報の特徴として最も多く選ばれた項目は次の通りです。

辞退の引き金(辞退経験者97名中・複数回答)割合
他社との比較で不利な評価をされていた69.1%
ネガティブな口コミや退職者の声が引用されていた40.2%
企業の評判やイメージに関するネガティブな記述があった27.8%
給与・待遇に関する不利な情報が提示されていた25.8%
AIが「おすすめしない」「注意が必要」という趣旨の回答をした10.3%

出典: 同上

最も多く選ばれたのは「他社との比較で不利な評価をされていた」でした。単独で自社に何が書かれているかよりも、競合と並べられたときの位置づけが挙げられています。

これは検索エンジンとの違いを示唆します。従来の検索では候補者が自社と競合のサイトを別々に見て、自分の頭のなかで比較していました。生成AIはその比較を1回の回答で提示します。比較の枠組みと結論を、AI側が組み立てているということです。

3.4 不正確と感じた情報で最多だったのは「古い情報」

同調査では、AIが提示する企業情報に「事実ではない・正確ではない」と感じた経験がある人が91.5%(n=94)に上りました。その86名への複数回答の結果は次の通りです。

不正確と感じた情報の特徴(86名中・複数回答)割合
既に変更されている古い情報が記載されていた58.1%
存在しない制度や福利厚生が記載されていた41.9%
企業の事業内容や規模が実際と異なっていた32.6%
他社の情報と混同されていた27.9%

出典: 同上

最も多く選ばれたのは「既に変更されている古い情報」でした。複数回答であるため、誤情報全体の58.1%が古い情報だったわけではなく、古い情報と事実無根の記述が排他的に分類されているわけでもありません。それでも、この限定調査では情報の陳腐化が最も多く挙げられたという事実は、実務上示唆的です。

制度改定や事業再編がWeb上の情報エコシステムに反映されるまでにはタイムラグがあります。この性質は対処可能性の点では朗報です。「AIの誤りは避けられない」と諦める話ではなく、情報の鮮度管理という既知の実務課題に還元できる部分があるからです。ただし自社サイトを更新すれば直ちに解決するわけではありません。理由は次章で扱います。

なお、AIが生成する誤った情報の定義・類型・構造的な原因については、AI誤情報対策の全体像で体系的に扱っています。

4. AIはどこを見て語るのか — 自社サイトは全体の一部でしかない

4.1 引用元の構成

自社について書かれた情報を整えれば、AIの回答は変わるのでしょうか。ここで押さえるべきは、AIが参照している情報源の構成です。

employer reputationサービスを提供するPerceptionXは、2025年9月から2026年5月にかけて、雇用主に関する質問へのAI回答を10万件超収集し、そのうち引用を少なくとも1件含む78,311件を分析しました。同社によれば、主要な雇用主に関するAI回答のうち、Glassdoorが3分の1超に登場したとされています。

この分析対象は、引用元を表示する機能から収集されたものです。引用を表示しない通常のチャット応答を含む「AI回答全般」の構成比ではない点にご注意ください。

同社の共同創業者Karim Al Ansari氏がHR Executive誌に寄稿した記事では、AIが参照する情報源を4つに分類し、同社が分析したエンタープライズ企業において、自社保有メディア(採用ページ、企業ブログ、公式LinkedIn)がAI引用の25%、影響可能な第三者サイト(Glassdoor、Indeed、Comparably)が40%超、コミュニティ由来(Reddit、Quora、Blind)が約20%を占めたと述べています。加えてBusiness Insider、Fortune、Forbes等のメディアや「働きがいのある企業」系のランキングが、多くの人事チームが注視するコミュニティプラットフォームより上位に現れるとも指摘されています。

ただし、この内訳の母数となった企業数や算出方法は公開されていません。PerceptionX社は当該領域のサービス提供事業者であり、当事者による分析です。「25%」「40%」を確定的な事実として扱うことはできず、傾向を示す補助線として読むべきものです。また同社の分析は主に英語圏のエンタープライズ企業が対象で、日本語での質問に同じ構成が当てはまるかは確認できていません。

参考として、前掲LANY調査では、AIに提案された企業に対して取った行動の最多は「口コミサイトやSNSで評判を確認した」58.1%で、「公式サイトや採用ページを調べた」36.2%を上回りました。これはAI回答の引用元構成を検証したものではありませんが、口コミサイトやSNSが候補者の確認行動において重要であることを補助的に示しています。

4.2 含意 — オウンドメディアだけでは決まらない

採用サイトを整えることは必要ですが、それだけでAIの回答は決まりません。AIは自社が管理していない場所——口コミサイト、コミュニティ、報道、ランキング記事——も参照して回答を組み立てています。

多くの企業は、候補者が最終的にそこへ来ることを前提に、採用サイトとオウンドメディアへ予算と工数を集中させてきました。しかし候補者がAIに最初の質問を投げる場合、オウンドメディアに到達する前に、第三者情報を素材にした要約が提示されていることになります。

AI上でのブランド認知が自社発信だけでは決まらないという論点は、AI Perception Management(AI認知管理)の中核にある問題意識です。

4.3 発見のチャネルとしての側面

一方で、AIはリスクだけをもたらすわけではありません。

前掲LANY調査では、AIに相談した結果それまで知らなかった企業を提案された経験がある人が94.6%(n=111)で、うち31.4%は実際に応募しています。ナイルの調査でも、生成AIが企業を知るきっかけになった就活生は約7割(「よくある」21.0%+「ときどきある」49.8%)でした。

「業界内で〇〇に強い会社は」といった問いに自社が挙がるかが、候補者との最初の接点を左右し得ます。知名度で劣る企業には、むしろ機会になる可能性があります。

ただし慎重さも必要です。いずれも当事者による小規模調査であり、本稿で確認した公開資料の範囲では、AI経由の認知が応募数や採用成果にどれだけ寄与したかを定量的に開示した独立の一次事例は見つかりませんでした。

5. 採用文脈で誤情報が出たとき

5.1 採用文脈に固有の難しさ

第一に、当否の判定が難しい情報が多い点です。「残業が多い」「社風が合わない」といった記述は、事実の誤りというより評価です。数値で反証できる部分(平均残業時間、有給取得率、離職率)と、評価にとどまる部分が混在しています。

第二に、元情報が匿名の体験談であることが多い点です。退職者の口コミはその人にとっては事実であり、企業側が偏っていると感じても虚偽と断定することは通常できません。

第三に、候補者は企業に問い合わせない点です。前掲LANY調査では、辞退を決める前に「採用担当者や面接官に直接確認した」のは20.6%(辞退経験者97名中)でした。多くは自分で調べ、判断し、企業には何も伝えずに離れます。企業側にフィードバックが返ってこない——これがLANYの言う「サイレント辞退」の核心です。

なお同調査では、辞退した97名のうち「確認せず、AIの情報をそのまま判断材料にした」は3.1%で、96.9%は何らかの確認を行っていました。ただしこの96.9%は辞退経験者97名を分母とする値で、対象111名全体の87.4%が辞退経験ありと回答した数値とは分母が異なります。両者を並べて因果的に読むことはできません。

5.2 対処の考え方

AIが生成した誤情報にどう向き合うかは、それ自体で大きな主題です。以下の関連記事を参照してください。

採用担当者としてまず押さえるべきは、次の2点です。

外部の企業が、第三者のAIサービスの回答を任意に直接編集することは通常できません。できるのは、各AIサービスのフィードバック・訂正手続きの利用と、AIが参照する情報源の整備の組み合わせです。

そして古い情報の是正が、着手しやすい出発点です。前章の限定調査では、不正確と感じた情報として「既に変更されている古い情報」が最も多く挙げられていました。制度改定や事業再編が反映されていないケースは、正確な一次情報を公開し直すことで改善の余地があります。虚偽の中傷への対処より着手しやすい領域です。

6. 隣接研究からの注意喚起

採用とAIをめぐる査読研究は蓄積が進んでいます。ただし、本稿で確認した文献・公開資料の範囲では、「候補者が生成AIで企業を調べる」という本記事の主題を直接扱った査読研究は見つかりませんでした。以下は隣接領域の知見であり、射程を正確に理解したうえで参照すべきものです。

6.1 採用プロセスにおけるAI利用は、組織の魅力度に影響し得る

Tursunbayeva、Fernandez、Gallardo-Gallardo、Moscheraの4氏による研究が、European Management Journal誌に2025年3月に掲載されています(DOI: 10.1016/j.emj.2025.03.002)。EU加盟2か国でビネット調査実験を実施し、採用におけるAIと、職業上・個人的なデジタルデータの組み合わせが、候補者の組織魅力度(Organizational Attractiveness)認知と応募意向にどう影響するかを検証したものです。

主な知見は、採用におけるAIとデジタルデータの利用が組織魅力度と応募判断に影響し得ること、その影響が組織魅力度の下位次元や候補者の学問的背景によって異なることです。同研究では、工学系候補者において自分のデジタルデータが採用に利用され得ると知った場合に組織魅力度の認知が低下した一方、ビジネス系候補者の意向は変化しなかったと報告されています。ただし特定の実験条件・下位尺度での結果であり、「工学系人材はAI採用を嫌う」といった一般化はできません。

この研究が扱うのは「企業が採用にAIを使うこと」であり、「候補者がAIで企業を調べること」ではありません。方向が逆である点を混同してはいけません。

それでも、採用プロセスにおける情報のあり方が組織魅力度認知を動かし得ること、その反応が候補者の属性によって一様でないことは示唆的です。

6.2 「AIを使っています」と明示することの逆説

Oliver Schilke氏(アリゾナ大学)とMartin Reimann氏による研究が、Organizational Behavior and Human Decision Processes誌の第188巻に掲載されています(論文番号104405、DOI: 10.1016/j.obhdp.2025.104405)。13の実験を通じて、生成AIの利用を開示することが開示した主体への信頼にどう影響するかを検証したものです。

結論は一貫しています。AI利用を開示した個人・組織は、開示しなかった場合と比べて信頼が低下しました。著者らはこれを「透明性のジレンマ」と呼び、正統性(legitimacy)認知の低下として説明しています。検証された文脈には求職応募の場面も含まれます。

この知見は、「AI活用に積極的な会社です」と打ち出せば先進性が伝わる、という素朴な想定への注意喚起になります。

ただし限界もあります。同研究は、採用広報でAI活用をアピールする条件そのものを検証したものではありません。開示すべきでないと結論づけた研究でもなく、著者ら自身が透明性のコストを引き下げる必要性を論じています。実験は主に欧米圏の参加者が対象であり、日本の候補者に同じ反応が生じるかも検証されていません。

そして重要な点として、法令・社内規程・契約上の開示義務と、開示が信頼に与える影響は別問題です。開示が義務づけられる場面では、信頼への影響を理由に開示を回避することはできません。この研究は「言い方を工夫すれば信頼低下を避けられる」ことを示すものでもありません。

なお執筆時、「求人広告にAI利用の透明性を明示すると企業への信頼が向上する」という趣旨の研究が候補に挙がりましたが、一次情報での実在確認ができなかったため採用していません。

7. 人事・採用広報の実務設計

7.1 まず把握する — 測定条件をそろえて確認する

最初のステップは施策ではなく確認です。候補者が投げそうな問いを、複数のAIサービスに入力してみてください。

  • 「〇〇株式会社で働くのはどうですか」
  • 「〇〇株式会社の残業時間や働き方を教えてください」
  • 「〇〇株式会社と△△株式会社(競合)の社風の違いは」
  • 「〇〇業界で働きやすい会社を教えてください」(自社が挙がるか)
  • 「〇〇株式会社に応募する際の注意点はありますか」

4番目と5番目が特に重要です。前者は自社が「発見」される可能性を、後者は辞退経験者が最多で挙げた「他社との比較で不利な評価」の有無を確認するためのものです。

そして、確認するなら測定条件を記録してください。「何回か試した」だけでは、変化が起きたときに原因を切り分けられず、社内で共有もできません。最低限、次の項目をそろえます。

記録すべき条件なぜ必要か
使用したAIサービスとモデルサービス・モデルごとに回答が異なる
Web検索機能の有無最新情報を参照するかが変わる
言語・地域設定参照される情報源が変わる
実施日時参照元の増減と対応づけるため
ログイン状態・会話履歴の有無個人化の影響を切り分けるため
使用したプロンプト(一字一句)表現が変われば結果も変わる
同一条件での反復回数1回の結果は1サンプルにすぎない

これらを記録して初めて、「先月より悪化した」「競合より不利だ」という判断に根拠が生まれます。

7.2 一次情報を整備する

優先順位は、AIが誤りやすい領域から。前章の限定調査で最も多く挙げられたのは「既に変更されている古い情報」、次いで「存在しない制度や福利厚生」でした。制度・福利厚生・事業内容の記載が最新か、旧制度の記述がWeb上に残っていないかを点検します。

候補者が不安に感じる論点に、具体的な数値で答える。ネガティブ情報として多く挙げられたのは残業・ワークライフバランス、社風、給与、離職率でした。公開できる範囲の実数(平均残業時間、有給取得率、離職率、育休取得率など)を、根拠と算出期間を明示して公開することには意味があります。「風通しの良い社風」といった抽象的な表現は、同じ調査の「情報が抽象的で企業の実態が伝わらなかった」という回答に該当し得ます。

更新日を明記し、FAQで先回りする。いつ時点の情報かを示すことは読み手にもAIにも有用です。候補者が不安に思う論点をQ&A形式で整理することも有用ですが、後述の通り、FAQに構造化データを付けて検索エンジン上の表示が有利になるという期待は持たないでください。

7.3 第三者の場を無視しない、しかし操作しない

自社サイト以外の情報源が大きな比重を占める以上、そちらを無視することはできません。しかし、ここには明確な一線があります。

やってよいこと

  • 口コミサイトの企業ページに、公式情報として正確な事実を掲載する(多くのサービスが企業向けの公式情報掲載機能を提供しています)
  • 事実誤認がある投稿について、各サービスの規約に沿った正規の手続きで申し立てる
  • 社員の真実かつ自発的な発信を妨げない
  • 取材や外部メディアへの寄稿を通じて、第三者の場に正確な情報を増やす
  • 業界団体の調査や公的な統計に協力し、客観的なデータが参照可能な形で存在するようにする

やってはいけないこと

  • 社員に好意的な口コミの投稿を指示する、または報酬・人事評価と結び付けて依頼する
  • 第三者に依頼して口コミを投稿させる
  • ネガティブな口コミを、内容の真偽にかかわらず一律に削除させようとする

社員の発信については、消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」の考え方が参考になります。同Q&Aは、従業員が自身のSNSで自社商品の感想を投稿しても、それだけで直ちに「事業者の表示」に当たるとは判断されないとしつつ、従業員の地位・立場・権限・担当業務・表示目的等の実態によっては、事業者が表示内容の決定に関与していると認められ「事業者の表示」に当たる場合があると説明しています。その場合は「広告」等と分かりやすく記載し、事業者の表示であることを明瞭にする必要があるとされます。

つまり所属を書き添えれば済む話ではありません。会社による指示・評価・報酬と結び付けないこと、広告・宣伝に当たる場合は関係性を明瞭に表示すること、守秘義務や個人情報に配慮することが実務上の要点です。

なお同告示は、一般消費者向けの商品・役務に関する表示を対象とする景品表示法の枠組みです。採用領域の口コミが該当するかは表示の内容や目的によるため一律には言えません。ただし法令面を措いても、事業者が関与した表示を第三者の自発的な発信に見せかけることは、発覚時に採用ブランドへの打撃が大きくなるおそれがあり、各サービスの規約違反にもなり得ます。

正攻法は、正確な一次情報を、参照されやすい形で、十分な量、公開し続けることです。遠回りに見えますが、これ以外に持続可能な方法はありません。

7.4 やってはいけない技術的な誤解

JobPosting構造化データは、AI OverviewsやAI Modeへの掲載を直接保証する専用施策ではありません。Googleは求人検索の体験に関する要件としてJobPosting構造化データを規定していますが、AI機能への掲載についてGoogle Search Centralの公式ドキュメントは「追加の要件はなく、特別な最適化も必要ない」「新たな機械可読ファイルやAI向けテキストファイル、マークアップを作成する必要はなく、追加すべき特別なschema.org構造化データもない」と明記しています。JobPosting構造化データは求人検索体験のために適切に実装すべきものです。この論点は独立した記事で詳しく扱う予定です。

llms.txtの設置をGoogle検索向けの施策として推奨することはできません。上記の通り、Googleは新たな機械可読ファイルの作成が不要であると明言しています。

FAQPageのリッチリザルトは、2026年5月7日以降Google検索に表示されません。FAQコンテンツ自体は候補者にとって有用であり、AIが参照する材料にもなり得るため作成する意味はありますが、「構造化データを付ければ検索結果で目立つ」という前提で工数を投じるべきではありません。

一方、Googleが公式に推奨する基本事項は採用サイトにもそのまま当てはまります。robots.txtやCDN・ホスティング基盤でクロールがブロックされていないこと、重要な情報がテキスト形式で取得可能であること、構造化データが可視テキストと一致していること——地味ですが、まず確認すべき前提条件です。採用サイトがクロールできない状態では、少なくともそのページをGoogle検索やGoogleのAI機能で参照可能にする施策は機能しません(第三者サイト上の自社情報はこの影響を受けません)。

なお、人材紹介・派遣・ATSを経由した求人における「雇用主が誰か」の帰属問題は、AI上での認知に固有の論点を生みます。これも別稿で扱う予定です。

7.5 部門間の連携

AI上での見え方は人事だけで管理できるものではありません。参照される情報源には、広報が管理するプレスリリース、IRの開示資料、マーケティングが管理するコーポレートサイトが含まれます。逆に、採用サイトの情報が採用以外の文脈のAI回答に使われることもあります。

人事が単独で採用サイトだけを整えても、他部門の発信と矛盾していれば、AIはその矛盾ごと候補者に提示します。少なくとも広報部門とは、見え方に関する情報を共有する体制を推奨します。

8. 単発の確認では足りない

8.1 なぜ継続が必要か

第一に、回答が変動するからです。同じ問いへの回答は実行のたびに変わり得ます。1回の確認で得られるのは1サンプルにすぎません。

第二に、参照元が変わるからです。新しい口コミ、報道、コミュニティでの話題——自社が関与できない場所で情報が増減し、回答はそれに追随します。

第三に、AIサービス自体が更新されるからです。昨日まで問題のなかった回答が変わることがあります。

8.2 「AI」を一枚岩として扱わない

ここで注意が必要です。「AI」と一括りにできるものではありません。

通常のチャット、Web検索を伴うチャット、Google AI Overviews、Google AI Modeでは、最新情報へのアクセス方法、引用元を表示するかどうか、個人化や会話履歴の効き方が異なります。前節の「回答は毎回変わる」「履歴が影響する」も、サービスや設定によって程度が変わり得ます。

したがって「AIでは自社はこう見えている」と一つにまとめることはできません。どのサービスの、どの機能で、どの条件で確認した結果なのか——7.1の測定条件の記録が必要になるのは、このためです。

8.3 何を継続的に見るか

見るべき項目なぜ重要か
自社が言及されるか候補者との最初の接点が生まれるかどうか
どう語られているか(内容)「引用された」だけでは分からない
印象は肯定的か否定的かネガティブな枠組みが定着していないか
競合と並べたときの位置づけ辞退経験者が最も多く挙げた論点
誤情報・古い情報の有無限定調査で最も多く挙げられた誤りの型
何が引用元になっているか働きかけるべき対象を特定するため

「AIに出てくるか」だけでは足りません。出てきたうえで何と言われ、他社と並べてどう位置づけられているかまで見る必要があります。

8.4 AI認知管理という枠組み

AI空間における自社の認知を、複数のAIサービス横断で、内容と印象まで含めて、条件をそろえて継続的に把握し管理する——この考え方をVaipmではAI Perception Management(AI認知管理/AIPM)と呼んでいます。採用はその一つの適用領域です。

同じ枠組みは広報・レピュテーション、IR、営業・マーケティングにも適用できます。参照される情報源は部門をまたいで共有されているためです。

概念そのものの定義や、AIO・GEO・LLMOといった関連用語との関係については、AI Perception Management(AIPM)とは、およびAIO(AI最適化)とはLLMO(大規模言語モデル最適化)とはで解説しています。

9. 本記事が依拠したデータに共通する限界

ここまで参照した各調査には共通する限界があります。社内で引用する前に押さえてください。

いずれも実際の利用ログや応募管理システム上の行動追跡ではなく、主として回答者の自己申告に基づいています。「AIが原因で応募をやめた」「第一印象に影響した」という数値は、因果効果の測定ではなく、回答者本人がそう認識したという事実を示します。実際に何が意思決定を動かしたのかは特定できません。

加えてLANY・ナイル・PerceptionXは当該領域でサービスを提供する事業者による調査であり、サンプルサイズも111名から419名と限定的です。PerceptionXの求職者調査(306名)はAIチャットボット利用中の求職者に対象が絞られています。

したがって本記事の数値は、傾向を把握し、自社で確認すべき論点を洗い出すための出発点として扱うのが適切です。「業界の実態はこうだ」と断定する根拠にはなりません。だからこそ、自社について自社で測る必要があります。

よくある質問

Q1. 学生は本当にAIで企業を調べているのですか。ESの作成に使っているだけではないですか。

両方が起きています。マイナビの2027年卒調査(2026年4月実施、全体n=1,258)で就職活動にAIを使ったと回答した1,076名のうち、最多はESの推敲71.8%でしたが、業界研究52.2%、仕事研究35.8%、企業・仕事検索26.3%と企業を調べる用途も相当な規模です(複数回答)。業界研究は前年35.5%から、企業・仕事検索は16.2%から伸びました。ただし「業界研究」は特定企業を名指しで調べることと同義ではありません。

Q2. 学生はAIの回答を信じているのですか。

「そのまま信じる」層は少数です。同調査でAI利用経験のある学生1,184名のうち「AIの提案をほぼそのまま自分の判断として利用する」は2.9%、最多は「判断材料の一つとして考慮する」68.7%でした。なお、AIに相談した経験がある576名では78.5%が「判断や行動に影響した」と回答していますが、母集団も質問形式も異なるため単純比較はできません。相談するほど関与した層で影響認識が高くなるのは自然です。

Q3. AIは自社について、具体的にどんなネガティブ情報を出すのですか。

転職者を対象とした株式会社LANYの調査(2026年4月実施、対象はAIで企業を調べた25〜45歳111名)で、ネガティブ情報を目にしたと答えた103名への複数回答では、「残業が多い・ワークライフバランスが悪い」63.1%、「社風や職場の人間関係」35.9%、「給与水準が低い」30.1%、「離職率が高い」27.2%が上位でした。対象者が限定された小規模調査であり参考値です。新卒学生が対象ではない点にもご注意ください。

Q4. AIに誤った情報が出ていた場合、どうすればいいですか。

外部の企業が第三者のAIサービスの回答を任意に直接編集することは通常できません。できるのは、各AIサービスのフィードバック・訂正手続きの利用と、AIが参照する情報源の整備の組み合わせです。前掲LANY調査では不正確と感じた情報として「既に変更されている古い情報」が最も多く挙げられており、制度改定や事業再編が反映されていない記述の是正が着手しやすい出発点になります。手続きや法的論点はAI誤情報の訂正・削除およびAI誤情報と法的責任を参照してください。

Q5. 採用サイトを充実させれば、AIの回答は変わりますか。

必要ですが、それだけでは十分でない可能性が高いです。PerceptionXの分析では、同社が分析したエンタープライズ企業においてAI引用に占める自社保有メディアの割合は25%程度とされ、口コミサイトなど第三者の情報源が大きな比重を占めていました。ただし母数や算出方法が公開されておらず、当事者による分析で、主に英語圏企業を対象としている点に留意が必要です。自社サイトの整備と、第三者の場に正確な情報が存在する状態を作ることの両方が求められます。

Q6. 口コミサイトの評価が低いのですが、どう対処すべきですか。

各サービスが提供する企業向けの公式情報掲載機能を活用し、事実誤認については規約に沿った正規の手続きで申し立ててください。一方、社員に好意的な口コミの投稿を指示する、報酬や人事評価と結び付けて依頼する、第三者に投稿させるといった行為は避けるべきです。消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aは、従業員の投稿でも地位・立場・担当業務・表示目的等の実態によっては「事業者の表示」に当たり得るとしています。各サービスの規約違反にもなり得ます。

Q7. JobPosting構造化データやFAQページは、AI検索で有利になりますか。

JobPosting構造化データは求人検索の体験のために適切に実装すべきものですが、AI OverviewsやAI Modeへの掲載を直接保証する専用施策ではありません。GoogleはAI機能への掲載について「追加の要件はなく、特別な最適化も必要ない」「追加すべき特別なschema.org構造化データもない」と明記しています。FAQについても、コンテンツ自体は候補者の不安に先回りする手段として有用ですが、FAQPageのリッチリザルトは2026年5月7日以降Google検索に表示されません。

Q8. 中途採用と新卒採用で、対応は変わりますか。

情報を求めるタイミングが異なります。LANY調査(転職者対象)では、AIで企業を調べるタイミングは「スカウトメールやオファーを受け取った後」53.2%が最多、次いで「応募するかどうか迷っていた時」40.5%、「面接の前」38.7%でした(111名・複数回答)。中途採用ではスカウト送信直後が重要な局面になります。新卒については同種の時系列データが確認できていませんが、企業探しから選考準備まで広い期間でAIが使われています。正確な一次情報を整えるという基本方針は共通です。

Q9. 自社でAIの回答を確認する際、何に注意すべきですか。

条件を記録することです。AIサービスとモデル、Web検索機能の有無、言語・地域、実施日時、ログイン状態や会話履歴、プロンプト、反復回数(詳細は7.1の表)。記録がないと変化の原因を切り分けられません。また通常チャット、Web検索付きチャット、AI Overviews、AI Modeでは最新情報へのアクセスや個人化の効き方が異なるため、「AIではこう見える」と一つにまとめることはできません。

Q10. 「AIを積極活用している会社です」と発信することは、採用広報として有効ですか。

慎重に考えるべき論点です。Schilke氏とReimann氏がOrganizational Behavior and Human Decision Processes誌に発表した研究(2025年、13の実験)では、生成AIの利用を開示した個人・組織は開示しなかった場合と比べて信頼が低下する結果が一貫して観察されました。ただし同研究は採用広報でのAI活用アピールそのものを検証したものではなく、主に欧米圏の参加者が対象です。また、法令や社内規程で開示が求められる場面では、信頼への影響を理由に開示を避けることはできません。

まとめ

  1. 学生も企業も動いた。就職活動でのAI利用は84.9%に達し、企業側の実感も30.6%へ上昇しました(調査年・母集団が異なるため単純比較は不可)。
  2. しかし測られていないものがある。「学生がAIを使う」と知ることと、自社がAI上でどう説明されているかを測ることは別問題です。後者はどの業界調査にも載っていません。
  3. 候補者は鵜呑みにしないが、判断材料にはする。「ほぼそのまま利用する」は2.9%。一方で、AIが示した枠組みは検討の入口になります。
  4. 辞退経験者が最も多く挙げたのは他社との比較。転職者の限定調査(97名・複数回答)で69.1%が「他社との比較で不利な評価」を挙げました。
  5. 誤りとして最も多く挙げられたのは古い情報。同調査(86名・複数回答)で58.1%。情報の鮮度管理という既知の課題に還元できる部分があります。
  6. 自社サイトだけでは決まらない。AIは口コミサイト、コミュニティ、報道も参照します。操作ではなく、正確な一次情報を参照されやすい形で公開し続けることが正攻法です。
  7. 測るなら条件をそろえて。サービス・モデル・検索機能の有無・言語・日時・履歴・プロンプト・反復回数を記録しなければ、変化の原因を切り分けられません。

次のアクション

まず、自社について候補者が投げそうな問いを、複数のAIサービスに実際に入力してみてください。特に「〇〇業界で働きやすい会社は」(自社が挙がるか)と「〇〇株式会社と競合他社の違いは」(比較での位置づけ)の2問は優先度が高い問いです。その際、7.1の測定条件を記録してください。

多くの企業にとって、自社のAI上での見え方を体系的・継続的に測る体制は、まだ整備途上と考えられます。学生のAI利用に気づいていることは出発点であって、到達点ではありません。

AI上の認知を継続的に把握・管理するという考え方の全体像については、AI Perception Management(AIPM)とはをご覧ください。

出典一覧

一次調査・公式ドキュメント

  1. マイナビ「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」(2026年5月26日公表/調査期間2026年4月25日〜30日/有効回答1,258名)
    https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260526_110798/
  2. マイナビ『2025年度(2026年卒)新卒採用・就職戦線総括』(2025年9月26日公表/企業の生成AI利用実感30.6%)
    https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250926_101951/
  3. マイナビキャリアリサーチLab「生成AIがもたらす就職活動の変化〜2024年卒から2025年卒の変化について」(2024年8月9日公表/2025年卒時点の12.3%)
    https://career-research.mynavi.jp/column/20240809_84095/
  4. Google Search Central「AI features and your website」(最終更新2025年12月10日)
    https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features
  5. 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/

査読論文

  1. Tursunbayeva, A., Fernandez, V., Gallardo-Gallardo, E., & Moschera, L. (2025). Artificial intelligence and digital data in recruitment. Exploring business and engineering candidates' perceptions of organizational attractiveness. European Management Journal. DOI: 10.1016/j.emj.2025.03.002
  2. Schilke, O., & Reimann, M. (2025). The transparency dilemma: How AI disclosure erodes trust. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 188, 104405. DOI: 10.1016/j.obhdp.2025.104405

事業者による調査(当事者調査。数値は参考値)

  1. 株式会社LANY「採用プロセスにおけるAIが引き起こす『サイレント辞退』実態調査」(2026年6月4日公表/調査2026年4月1〜3日/有効回答111名/対象は直近1年以内に転職活動を行いAIで企業情報を調べた25〜45歳)
    https://www.lany.co.jp/lany-llmo-lab/job-candidate-ghosting
  2. ナイル株式会社「就職活動における生成AI活用実態調査」(2026年4月16日公開/調査期間2026年3月25日〜30日/有効回答419名)出典: ナイルのSEO相談室調べ
    https://www.seohacks.net/column/30459/
  3. PerceptionX「How Job Seekers Use AI to Research Employers」(2026年5月/Prolific経由/7か国306名/対象はAIチャットボット利用中かつ求職中の層)
    https://www.perceptionx.ai/research/ai-candidate-usage
  4. Al Ansari, K.「The invisible interview: How AI is reshaping employer brand」HR Executive(2026年3月)
    https://hrexecutive.com/the-invisible-interview-how-ai-is-reshaping-employer-brand/

本記事について

本記事の数値はすべて2026年8月2日時点で一次情報にあたって確認したものです。この領域は変化が速いため、引用の際は発表元での再確認を推奨します。

AIO・GEO・LLMO・AIPMはいずれも公式に定められた規格ではなく、実務上の呼称です。またGoogleのAI機能は通常検索のインデックスと技術要件を基礎としており、AI機能専用の特別なschema.orgマークアップは不要とされています。

Vaipmの視点

AI空間における自社の認知を、複数のAIサービス横断で、内容と印象まで含めて、条件をそろえて継続的に把握し管理する——この考え方をVaipmではAI Perception Management(AI認知管理/AIPM)と呼んでいる。採用はその一つの適用領域である。同じ枠組みは広報・レピュテーション、IR、営業・マーケティングにも適用できる。参照される情報源は部門をまたいで共有されているためだ。Vaipmは、AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測によって測定している。

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