生成AIが自社について語るとき、その回答に引用として示されるのは、広報が最も管理してきた自社サイトでも、最も働きかけてきた報道でもありません。その両方を含む、はるかに広く、サービスによって構成の違う情報源です。
国内の広報部門における生成AIの導入率は、2回の調査で37.2%(2024年)から77.0%(2025年)へ上昇しました(日本広報学会・生成AIを活用した広報研究会、有効回答121件および104件)。ただし用途は制作・要約・企画支援に集中しています。
一方、供給の構造は従来の広報の前提とずれています。McKinseyの分析では、ブランドの自社サイトがAI検索の参照する情報源に占める割合は多くの場合5〜10%程度と推計されています(算出根拠は非公開のため参考値)。またAI Overviewsに引用されたURLのうち、同じクエリの検索結果の最初の10ブロックに入っていたのは37.9%でした(Ahrefs、863,000件のSERPと400万件のAI Overviews URL)。引用元の顔ぶれも、調査対象のデータセットではサービスごとに大きく異なっていました。
そして2026年5月、測定・評価の国際団体AMECが「AMEC GEO Principles」を公表しました。本記事はこの供給構造を広報・PRの視点から整理し、AMECの原則と突き合わせます。誤りへの対処ではなく、平常時に正しい情報がどこから引かれ、どう扱われるかを扱います。
本記事の観測範囲(重要)
本記事が測定対象とするのは、AI回答の画面に表示された引用リンク・支持リンクです。これらは回答を支える公開上の手掛かりですが、モデルが内部で参照・評価した情報源の全体や、各ページの因果的な寄与を示すものではありません。Googleも自社の公式ドキュメントでこれらを「supporting links(支持リンク)」と表現しています。
AMECのGEO原則も同じ立場で、観測されたAI出力は「directional indicators(方向性を示す指標)」であり、ツール・プロンプト・市場・言語・時間をまたいで透明に検証されるべきものだとしています。本記事のタイトルにある「AIは何を見て」も、この限定のもとで読んでください。
この記事で分かること
- AIが参照する情報源に占める自社サイトの比重と、その限界
- 引用として表示されるURLが検索上位と一致しない構造的な理由(query fan-out)
- ChatGPT・Google AI Overviews・Perplexityで引用元の構成がどう違うか
- AMECのGEO原則が広報の測定に何を求めているか
- 実務として何ができ、何をやってはいけないか
対象読者
事業会社の広報・PR部門、PR会社、コーポレートコミュニケーションの責任者層を想定しています。採用広報の文脈は扱いません(採用候補者はAIで会社を調べているを参照)。
用語について
本記事ではAIO・GEO・LLMOといった呼称を、公式規格ではなく実務上の呼び名として扱います。Google Searchは公式ドキュメントで、生成AI機能に出るための追加要件や特別な最適化は必要なく、生成AI検索への最適化は検索体験への最適化であり依然としてSEOである、と説明しています。用語の整理はAIOとはとLLMOとはを参照してください。
本記事の後半で用いる「AIPM(AI Perception Management)」も、業界で共通に定められた名称ではなく、Vaipmが採用している整理です。この点はAIO・GEO・LLMOと同じ扱いになります。