ここが本稿の核心です。以下はすべて Google Search Central の JobPosting ドキュメント(2026年8月9日確認)に基づきます。仕様は変わり得るため、実装時には現行版を確認してください。
Googleがサポートするプロパティは、必須・推奨・ベータの三層に分かれています。必須プロパティとして5項目が列挙されています(datePosted・description・hiringOrganization・jobLocation・title)。ただし jobLocation には例外があり、applicantLocationRequirements を用いる100%リモート求人では必須ではありません。
4-1. hiringOrganization — 拠点名ではなく、企業名
もっとも誤りが起きやすいプロパティです。ドキュメントは、これが求人を提供する組織であり会社の名称でなければならないと明記しています。示されている対比は明快で、"Starbucks, Inc" のような法人名を入れるべきであり、"Starbucks on Main Street" のような採用拠点名を入れてはいけません。
"hiringOrganization": {
"@type": "Organization",
"name": "MagsRUs Wheel Company",
"sameAs": "http://www.magsruswheelcompany.com"
}
sameAs には企業のウェブサイトを指定できます。同名・類似名の企業が存在する場合、名称だけでは一意に定まりません。これを識別の補助として使うことは合理的ですが、その効果をGoogleがJobPostingのドキュメントで保証しているわけではありません。
4-2. confidential — 匿名求人のための公式ルール
多くの実務者が知らないルールがここにあります。ドキュメントは、組織が匿名で採用している場合——例として挙げられているのは、匿名の雇用主に代わって人材サービス事業者が募集する場合、および雇用主が直接プラットフォーム上で匿名募集する場合です——hiringOrganization.name に confidential という値を使う、と定めています。
"hiringOrganization": {
"@type": "Organization",
"name": "confidential"
}
重要なのは、匿名求人であっても「匿名である」ことを宣言する方法が用意されている点です。雇用主を伏せたい場合に掲載主体の社名や架空の名称を入れる、プロパティごと省くといった対応が取られることがありますが、仕様上の正解は confidential です。なお雇用主を偽って表示することは、Googleの求人コンテンツポリシーで明確に禁止されています。他組織へのなりすまし、実際の求人を正確に表していない表示、実在しない求人の掲載、権限なく他社に代わって求人を掲載する行為などが違反例として挙げられています。
なお「実際に雇用する企業」は、勤務先企業と同義ではありません。 派遣労働者を法律上雇用しているのは派遣元であり、就業先の企業ではありません。人材紹介・派遣・ATS経由の求人において「誰が求人を出しているのか」が構造的に見えにくくなる問題は、それ自体が独立した論点です。この論点は本シリーズの別稿(人材ビジネスにおける雇用主帰属)で扱う予定であり、本稿は仕様の説明にとどめます。
4-3. jobLocation — 掲載場所ではなく、就業場所
jobLocation は、従業員が実際に出勤して働く事業所の物理的な場所を指します。ドキュメントは「求人が掲載された場所ではない」と明示しています。addressCountry は必須です。勤務地が複数ある場合は配列で記述し、Googleが表示に適した場所を選ぶとされています。
4-4. jobLocationType と applicantLocationRequirements — 完全リモートの表現
完全リモートの求人には専用の表現があります。jobLocationType に TELECOMMUTE を設定し、求人説明文にも100%リモートであることを明記します。要件は厳格で、ドキュメントは TELECOMMUTE の求人は完全にリモートでなければならないと定め、時々の在宅勤務が認められる求人やリモート勤務が交渉可能な福利厚生である求人など、100%リモートでない形態のマークアップを禁じています。
applicantLocationRequirements は応募者が所在してよい地理的範囲を指定します。物理的な勤務地を持たない100%リモート求人では、このプロパティで応募可能地域を指定し、少なくとも1か国の範囲を示す必要があります。 一方、物理勤務地とリモート勤務の両方を認める場合は、jobLocation に指定した国をデフォルトの範囲として使う構成もあります。
"applicantLocationRequirements": {
"@type": "Country",
"name": "USA"
},
"jobLocationType": "TELECOMMUTE"
4-5. directApply — 効果が「まだ開発中」と明記されているプロパティ
directApply は、その求人URLから直接応募できるかを示すブール値です。仕様書自体に注目すべき但し書きが付いています。この情報の使い方はまだ開発中であり、Google検索上ですぐに何らかの表示や効果が見られるとは限らない、というものです。
Googleの定義では、直接応募体験とは不要な中間ステップなしに短く単純な応募プロセスが提供されている状態を指し、応募のクリック・フォーム記入・サインインを複数回求められるようであれば直接応募ではないとされています。
このプロパティは本稿の主題を仕様の内側から示しています。実装したからといって、それが何かの表示や効果を生むとは限らない——Google自身が明記している例です。
4-6. validThrough と掲載終了の扱い — 手動対策のリスクがある領域
validThrough は求人の掲載終了日時です。有効期限がある求人では必須とされ、期限が分からない求人には指定しないと説明されています。
重要なのは掲載終了時の扱いです。ドキュメントは、応募を受け付けていない求人は所定の方法で終了させなければならず、期限切れの求人に適時に対応しないと手動対策を受ける可能性があると明記しています。方法は三つ——validThrough を過去の日時で埋める、ページ自体を削除して404または410を返す、ページからJobPosting構造化データを取り除く——です。なおGoogleは、理想としては期限切れの求人をサイトから削除することを勧めており、削除しない場合に validThrough を過去日時にする、という順序で記述しています。
これは実務上、最も見落とされやすい部分です。求人ページは、公開時よりも終了時のほうが失敗しやすい。 採用管理システムとの連携では、掲載開始と同じ精度で終了フローを設計する必要があります。
4-7. その他の推奨プロパティとベータプロパティ
推奨プロパティには、baseSalary(雇用主が提示する実際の基本給。unitText は HOUR〜YEAR のいずれか、範囲は minValue/maxValue で指定)、employmentType(FULL_TIME・PART_TIME・CONTRACTOR など8種から複数指定可)、identifier(雇用主側の求人ID)が含まれます。ベータの学歴・経験関連4プロパティにも directApply と同じ但し書きが付いています。
なお title には求人そのものの職種名を入れ、職種コード・住所・日付・給与・社名を含めないことが明記されています。
4-8. マークアップは可視テキストと一致していなければならない
プロパティ個別の話とは別に、全体にかかる原則があります。マークアップに含まれるすべての情報は、求人ページ上に可視で存在していなければならない、というものです。
ドキュメントは、給与がマークアップにあるのにページ上に表示されていない場合を違反例として挙げています。この原則は、生成AI機能についてのガイドの推奨とも一致します。構造化データは、ページに書いていないことを追加で主張する場所ではありません。