部門別ユースケース

言語が変われば、AIの答えも変わる — 海外展開企業のためのクロスボーダーAI認知

2026-08-07読了目安 24

著者: Vaipm(AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定している)

この記事のポイント

英語で聞くと、日本語とは違う答えが返る。プロンプトの言語がモデルの出力を変えることは複数の査読研究で実証されている。翻訳が言語のスイッチではなく変数である理由、日本語の一次情報が英語の問いで拾われにくい経路、市場ごとに異なる引用元と規制、否定すべき通説までを、一次情報と複数の査読研究で整理した海外展開企業向けガイド。

§0 本記事の観測範囲 — 何が実証されていて、何がまだ実証されていないか

海外展開している企業から寄せられる問いは、たいてい同じ形をしている。「日本語で聞くと自社は出てくるのに、英語で聞くと出てこない。あるいは、まるで違う説明をされる。これは何が起きているのか」。

本記事は最初に観測範囲を宣言する。投資判断の前に、どこまでが実証で、どこからが推論かを知る必要があるからだ。

実証されていること。 プロンプトの言語を変えるだけで、意味が同じ問いに対するモデルの出力が変わる。これは複数の査読研究で確認されている。モデルが特定の少数の国の価値観へ系統的に引き寄せられること、多言語の検索拡張生成(RAG)で検索・再ランク段階に英語とクエリ言語の優遇が生じうること、モデルがグローバルブランドや高所得地域を肯定的な属性と結びつけやすいこと、地理的な情報格差が言語を変えてもあまり縮まらないこと——これらも査読を経た研究として存在する。

実証されていないこと。 名指しの日本企業について、日本語と英語を統制条件下で比較した公開ベンチマークは、本調査の範囲では確認できなかった。「日本企業は英語圏のAIで不利である」と一般化して断定できる公開データもない。学術的に確立されているのは、言語がモデルの出力を左右するという一般的な機序までである。

したがって本記事は、次の立場を取る。機序は説明できる。方向の見当もつく。しかし、自社について何が起きているかは、自社を対象に測らないと分からない。この空白を埋める方法は、記事の最後(§10)で扱う。

なお、AI回答が古い情報や誤った内容で自社を語る問題そのものは、AI誤情報・誤帰属対策を正本とする。本記事は言語と市場という軸に限定する。

§1 同じ問いでも、言語が変われば答えが変わる — そして「母語が常に良い」わけではない

出発点は、2024年の ACL 本会議に採録された研究である。AlKhamissi らは、世界価値観調査(World Values Survey, WVS)の第7波から30問を選び、エジプトと米国の実際の回答者と同じ属性を持つ「ペルソナ」をモデルに与えて回答させた。エジプトの調査回答者は1,200名、米国は2,596名。ここから両国で人口属性が対応する303ペルソナずつを抽出し、英語とアラビア語の両方で同じ問いを投げた。対象モデルは GPT-3.5、mT0-XXL、LLaMA-2-13B-Chat、AceGPT-13B-Chat の4種である。

結果は、直感どおりの部分と、直感に反する部分に分かれた。

直感どおりの部分から。GPT-3.5 では、エジプトの調査に対する整合スコア(Soft / Hard)が英語 47.08 / 23.42、アラビア語 50.15 / 28.56。米国の調査に対しては英語 65.95 / 40.22、アラビア語 63.77 / 38.36。その文化の主要言語で聞いたほうが、実際の回答に近づいた。

問題は、これがすべてのモデルで成り立たなかったことである。 主に英語で事前学習された LLaMA-2-13B-Chat では、エジプトの調査に対する整合スコアが英語で 47.95 / 25.61、アラビア語で 44.67 / 23.34 となり、アラビア語で聞いたほうが悪化した。さらに、多言語でバランスよく学習された mT0-XXL は、米国の調査に対して英語で 53.20 / 28.30、アラビア語で 57.75 / 34.51 と、アラビア語で聞いたほうが米国の回答に近づくという逆転を示した。

ここから引き出せる実務的な含意は明快だ。「現地語で聞けば現地の文脈で答える」というのは、モデルの学習データ構成に依存する条件付きの現象であって、法則ではない。同じ問いを日本語で聞いた場合と英語で聞いた場合、どちらが自社にとって正確な答えを返すかは、モデルごとに違いうる。事前に理屈で決められるものではない。

同研究はもうひとつ、事業上重要な事実を報告している。4モデルすべてが、エジプトの回答よりも米国の回答に有意に近かった(モデル平均で、エジプト 47.16 / 27.03 に対し米国 59.07 / 33.78)。この研究では、プロンプト言語を変えても、全体として観測された米国回答への高い整合傾向を、一貫して解消することはできなかった。

加えて、同じ問いの言い換え4種に対する回答の一貫性は、この英語・アラビア語の比較において、モデル平均で英語 74.46、アラビア語 72.81 とわずかに英語が高かった。ただし AceGPT-13B-Chat では逆にアラビア語のほうが高く(66.66 対 61.84)、モデルごとの例外がある。この結果を非英語一般へ外挿することはできない。 それでも、単発の観測から「英語ではこう言われた」と結論することの危うさは示唆される。

§2 翻訳はローカライズのスイッチではない — モデルを条件づける「変数」である

2026年に Computational Linguistics 誌に掲載された Bulté と Rigouts Terryn の研究は、この問題をはるかに大きなスケールで扱った。10個のLLM(Claude 2種、GPT 3種、Gemini、DeepSeek、Llama、Mistral、Qwen)に対し、ホフステードの価値観調査モジュール(VSM)24問と WVS 39問の計63問を、11言語日本語を含む、4つの語族にまたがる選定)に翻訳して投げ、合計 332,640 件の回答を収集している。

この研究の設計で秀逸なのは、4つのプロンプト条件を分離した点である。(1) 現地語で、視点の指定なし、(2) 現地語で、「人間の視点で答えよ」、(3) 現地語で、「◯◯人の視点で答えよ」、(4) 英語で、「◯◯人の視点で答えよ」。

人間の実回答との整合(ピアソン相関)は、次の順序になった。

プロンプト条件VSM次元との相関WVS設問との相関
英語+明示的な文化的視点r = .53r = .44
現地語+明示的な文化的視点r = .28r = .38
現地語+一般的な人間の視点r = .10r = .23

この集計では、最も人間の実回答に近づいたのは、現地語ではなく、英語で「◯◯人の視点で答えよ」と明示した条件だった。 著者らは、人間側のデータに存在する変動と整合する変動を生むのは「文化的視点であって、プロンプト言語ではない」と述べ、言語だけがもたらす変動は人間側の変動とおおむね直交しており、文化的に有意味な信号を覆い隠すことさえある、と指摘している。さらに、言語と文化的視点を両方使っても、英語+文化的視点を上回らなかった。

ただし、この順位は集計方法に依存する。上の表は設問・次元ごとに国間のパターンを比較した相関である。各国の回答プロフィールを設問横断で比較した別の集計では、対象言語+文化的視点が r = .57、英語+文化的視点が r = .55 となり、前者がわずかに上回った。「英語で聞くのが常に最善」ではない。この研究から取り出せる中心的な結論は、言語を変えるだけよりも、文化的視点を明示するほうが、人間側の文化差との整合を改善しやすいという点である。なお4条件のうち視点を指定しない条件は、モデルが人間としてもAIとしても答えて視点が安定しなかったため、著者らは有効回答率の分析を除く後続分析から除外している。上の表が3条件なのはそのためである。

一方で、変動量そのものを見ると話が変わる。プロンプト言語を変えることは、明示的に文化的視点を要求するのとほぼ同程度に回答を動かしていた。つまり、言語を変えると答えは大きく変わる。ただしその変化は、必ずしも「その言語圏の人々の実際の見方」に近づく方向ではない

この二重性が、実務でいちばん誤解される部分である。「英語版を出したから英語圏向けのローカライズは済んだ」という理解は二重に誤っている。翻訳は出力を変えるが、変える方向は制御できていない。翻訳は、ローカライズのスイッチではなく、モデルを条件づける変数なのだ。

同研究はもうひとつ、本記事の読者にとって直接的な発見を報告している。モデルの回答は、オランダ、ドイツ、米国、そして日本の人間回答と、他のどの国よりもよく整合していた(相関 r = .60〜.75。次の層より約 .21 高い)。この4か国クラスタは、どのモデルでも、どのプロンプト条件でも維持され、別の国を明示的に指定しても大きくは崩れなかった。

ここは慎重に読む必要がある。これは「価値観調査の回答」の話であって、「日本企業の可視性」の話ではない。 日本が高整合クラスタに入っていることは、AIが日本企業を正確に、あるいは豊富に語ることを意味しない。後者については、むしろ逆方向を示唆する研究がある(§4で扱う)。この2つを混同すると、危険なほど楽観的な結論に至る。

なお有効回答率にも言語差があり、現地語で一般的な人間の視点を求めた条件では日本語 96.86%、ロシア語 88.43% だった。

§3 日本語の一次情報が、英語の問いで拾われにくい経路

ここまでは、モデルの内部(パラメトリック知識)の話だった。しかし、企業について語るとき、現在の主要なAI検索はウェブから文書を取得して回答を組み立てる。この取得と選別の段階に、言語による偏りが入る。

2026年の ACL 本会議に採録された Wang らの研究は、多言語RAGの再ランク(reranking)段階を対象に、既存のリランカーが英語とクエリ言語を系統的に優遇する言語バイアスを持つことを示した。同研究は、達成可能な上限(オラクル)との比較を導入し、最適な回答には複数言語に散らばった証拠が必要である一方、現行のシステムはそうした「回答に不可欠な」文書を系統的に抑圧している、と報告している。

同じ方向を、別の設計から示した研究がある。Ki らの査読前論文(arXiv:2509.13930)は、8言語・6つのオープンウェイトモデルを対象に、文書の関連度を一定に保ったまま言語選好を測定する手法を用いた。結果として、クエリが英語のとき、モデルは英語のソースを優先的に引用する傾向が確認された。この偏りは低資源言語ほど大きく、また文脈の中盤に置かれた文書ほど大きかった。さらに重要なのは、モデルが文書の関連度を言語選好とトレードオフすることがあるという指摘である。引用の選択が、常に情報の有用性だけで決まっているわけではない。査読前の研究であり、この点は確定した知見として扱わない。

もうひとつ、Findings of ACL 2025 に採録された49言語対象の大規模ベンチマーク(BORDIRLINES)が、検索段階の挙動を報告している。720件のクエリに対し、905本のWikipedia記事から抽出した7,436のパッセージを紐づけ、19,916件のクエリ・文書ペアを構築したものだ。ここでは、検索システムがクエリ言語の文書を優先することが確認されている(OpenAI埋め込みで約1.29倍、BGE-M3で約1.64倍)。また OpenAI 埋め込みは BGE-M3 より約1.72倍多く英語文書を引いた。英語でクエリを投げた場合、多言語検索モードであっても実質的にはほとんど多言語になっていなかった(引用率 94.8%、含有率 93.9% が英語)。

以上を日本企業の状況に置き換えるとこうなる。自社の最も正確な一次情報が日本語だけで存在する場合、英語の問いに対して、その日本語文書が候補集合に入り、再ランクを生き延び、引用されるという関門を通過しにくい経路が存在する。これは「実証された不利益」ではなく、「構造的に不利になりうる経路」である。 この区別は維持する必要がある。

ただし、同じベンチマークは反対方向の発見も報告している。複数言語にまたがって文書を検索したほうが、クエリ言語のみで検索するよりも、言語をまたいだ回答の一貫性が改善し、地政学的な偏りが減少した。処方箋は「すべてを英語に寄せる」ことではない。証拠が複数の言語で利用可能であることのほうが、一貫性には効いている。

§4 グローバルブランドと原産国効果 — 無名企業が構造的に不利になりうる理由

言語の問題と並んで、あるいはそれ以上に効いている可能性があるのが、エンティティそのものに対する偏りである。

2024年の EMNLP 本会議に採録された Kamruzzaman らの研究は、ブランドに対する偏りを正面から測った。一人当たりGDP水準で高・中・低に分けた15か国から、各国グローバル3・ローカル3のブランドを集め、4カテゴリで GPT-4o と Llama-3 を検証している。

得られたのは一貫した傾向だった。モデルはグローバルブランドを不釣り合いに肯定的な属性と結びつけ、贈り物の推薦では高所得国の相手に高級ブランド、低所得国の相手に非高級ブランドを提案した。同時に著者らは、特定の文脈では原産国効果がローカルブランドへの選好を押し上げうるとも報告している。単純に「ローカルは常に不利」ではない。

ここで、この研究が自ら記した限界を明示しておく。同研究の実験はすべて英語で実施された。 したがって、非英語の文脈で同じ挙動になるかは検証されていない。日英差の証拠としては使えない。

地理的な偏りは、より抽象的なレベルでも観測されている。2024年の ICML に採録された Manvi らの研究は、LLMがゼロショットで行う地理的な予測が、客観的な指標と最大でスピアマンの ρ = 0.89 まで相関することを示したうえで、魅力度・道徳性・知性といった主観的な話題については、低い社会経済状況の地域に対して系統的に低く評価する偏りがあり、その相関が最大 ρ = 0.70 に達することを報告した。偏りの大きさはモデル間で有意に異なるとも述べている。

そして、本記事の論点にとって決定的なのが、Conference on Language Modeling(COLM)2025 に採録された Lalai らの研究である。同研究は「20の質問」ゲームという多ターンの推論課題を使い、モデルが自ら質問を組み立てて対象を当てられるかを測った。対象は、著名人と文化的に重要な事物(食品・ランドマーク・動物など)からなる Geo20Q+ というデータセットで、日本語を含む7言語で実施されている。

結果は、Global North のエンティティのほうが Global South より、Global West のほうが Global East より、明らかに当てやすいというものだった。Wikipedia のページビューや事前学習コーパスでの出現頻度は、この差をわずかにしか説明しなかった。そして本記事にとって最も重要な発見は、ゲームをどの言語でプレイしても、この地理的な格差はほとんど埋まらなかったという点である。

この4本を重ねると輪郭が見えてくる。認知度の低い日本企業がAI回答で不利になりうる経路は、少なくとも2系統ある。言語(§3)と、エンティティとしての知名度と地理(本節)である。そして後者について検証されているのは、質問言語を切り替えるだけでは格差が大きく縮まらなかったという点までである。英語ページの新設がこの格差をどこまで改善するかは、この研究からは判断できない。 介入としての英語ページは、これらの研究では検証されていない。

なお、AI推薦におけるブランド選好を監査した査読前の枠組み(arXiv:2603.18300)は、GPT-4o・Gemini 1.5 Flash・DeepSeek-V3 を10トピック・2,070問で検証し、米国で開発されたモデルが米国のエンティティを顕著に選好する一方、DeepSeek はより均衡しつつも検出可能な地理的選好を示した、と報告している。ただしこの2,070問はすべて英語で実施されており、プロンプト言語を変える実験自体が行われていない(2025年3月、スウェーデンからの実行)。したがって、日本語から英語へプロンプトを変えると答えが変わることの直接証明にはならない。示しているのはモデルレベルの地理的なブランド選好までであり、査読前である点も含めて参考値として扱う。

§5 市場ごとに、引用元の顔ぶれが違う

ここまでは「モデルが何を好むか」の話だった。実務でもうひとつ効いてくるのが、「その市場で、AI回答にどのサイトが引用・帰属されているか」である。

この点について、市場横断の公開分析が2026年6月に arXiv で公開された(arXiv:2606.25787)。Rankfor.AI の3つのデータセットを統合したもので、128ブランド・12のホーム市場・13言語を対象に、167,551件のURLが特定できた引用(帰属行としては189,974件)を分類している。

この分析は査読前であり、かつAI可視性ベンダー由来である。 著者は Rankfor.AI に所属しており、独立した業界センサスではない。また分析対象はAI回答に帰属・表示された引用URLであって、モデルが内部で何を検索・参照・重み付けしたかではない。以下の数値は、その前提で参照する。

報告された4つのパターンは次のとおりである。

第一に、AIがブランドについて語るとき、その根拠は圧倒的に第三者のサイトにある。引用の 85.7% がブランド自身が所有していないサイトを指しており、自社所有は 14.3% にとどまった。

第二に、参照元は集中しつつ長い裾を持つ。引用の 80% が、およそ 18% のドメインから来ていた(Zipf則への当てはまりは α = 0.86、R² = 0.983)。

第三に、ひとつの参照サイトがほぼどこでも支配的である。Wikipedia が12言語中11言語で最多被引用ドメインであり、例外はリトアニア語だった(経済紙 vz.lt が 4.38% でわずかに上回った)。

第四に、しかし縁の部分では市場固有の構成になる。ポーランドの国内ブランド46社では、最多被引用ドメインは YouTube であり、さらに4つの人材・キャリア系ポータルが合計637件の引用を供給し、ポーランド語版 Wikipedia の297件のおよそ2倍に達していた。

この第四の発見が、クロスボーダーの実務にとって本質的である。同じ「AIに引用される」という現象でも、その供給構造は市場ごとに違う。 日本市場向けに最適化した第三者言及の構成が、進出先市場でそのまま通用する保証はない。

この点は、AI回答の引用元はどこから来るのかで扱っている「サービス別(ChatGPT / AI Overviews / Perplexity で引用元の構成が違う)」という軸とは、直交する別の軸である。同記事はサービスごとの供給構造を扱い、本記事は言語と市場ごとの差を扱う。両方を掛け合わせて初めて、自社が置かれた条件が特定できる。

なお、採用文脈での引用元(求職者の質問、雇用主レビューサイトの位置づけ)については候補者はAIで会社を調べているが正本であり、本記事では扱わない。

§6 規制も、国ごとに違う — 法的性格と適用日を混同しない

クロスボーダーの文脈では、技術と同じくらい規制の差が効く。ここで最も多い誤解は「各国がAI生成コンテンツへのラベル表示を義務付けはじめた」という一括りの理解である。これは法的に誤りである。 拘束力の性格も、対象も、適用日も、法域ごとに大きく違う。

法域文書法的性格中核的な内容適用日
EUAI Act 第50条+委員会ガイドライン拘束力ある規則AIとの対話であることの告知、AI生成・改変コンテンツの機械可読なマーキング等2026年8月2日から適用。委員会は2026年7月20日にガイドラインを採択
中国AI生成合成コンテンツ標識弁法+強制国家標準 GB 45438-2025共同部門規則(標準は強制)明示ラベル(利用者が知覚できる表示)と暗黙ラベル(メタデータ等)2025年9月1日施行済み
日本AI推進法(令和7年法律第53号)推進・政策枠組み法基本理念、各主体の責務、人工知能基本計画、人工知能戦略本部の設置2025年6月4日公布・一部施行、9月1日全面施行
日本AI事業者ガイドライン 第1.2版非拘束の行政指針ガバナンスの原則と実践2026年3月31日
米国FTC 消費者レビュー・推薦規則(16 CFR Part 465)拘束力ある連邦規則(限定分野)偽レビュー・偽推薦の禁止。存在しない人物によるAI生成レビューを含む2024年10月21日発効

いくつか、実務上重要な注記を補う。

EU について。 第50条は2026年8月2日から適用される。ただし、同日より前に市場投入されたAIシステムについては、第50条(2)のAI生成コンテンツのマーキング・検出義務に限り、2026年12月2日までの限定的な猶予が設けられている。原則は8月2日適用であり、猶予は限定された例外である。欧州委員会は AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範(Code of Practice)も用意しており、参加しない提供者は同等に十分な代替手段で適合を示す必要があるとされる。名宛人は主に提供者と利用実施者であり、AI Act は EU市場にAIを提供する者、またはその出力がEU域内で用いられる者に及ぶ。

日本について。 AI推進法は、EUのAI Actのように禁止行為を列挙する個別規制法とは性格が異なる。本則28条・附則2条からなり、各主体の責務、基本計画、戦略本部の設置を定める枠組み法である。AI生成コンテンツに対する横断的なラベリング義務は、本調査の範囲では確認されなかった。 AI事業者ガイドラインは非拘束の行政指針で、2024年4月の初版以降、2026年3月31日の第1.2版まで更新されている。

米国について。 FTC規則は、条文自体がAIに特化した要件を置いているわけではない。しかしAI生成のレビューにも適用される。存在しない人物によるレビューという類型に、AI生成の偽レビューが含まれるからだ。適用範囲は消費者レビューと推薦という限定分野であり、AI全般の透明性規制ではない。

したがって、進出先ごとに確認すべき問いは「ラベルを貼るべきか」ではなく、「その法域で何が拘束力を持ち、いつから、誰に、どの範囲でかかるのか」である。なお、AI回答による誤情報の法的責任という論点そのものは、AI誤情報と法的責任が正本である。

§7 技術的な落とし穴 — クローラーは、あなたの想定した「訪問者」ではない

多言語サイトの技術構成にも、クロスボーダー固有の落とし穴がある。

Google は公式ドキュメントで、locale-adaptive なページ——訪問者の推定国や優先言語に応じて同じURLで異なる内容を返すページ——について、次のように説明している。サイトが locale-adaptive である場合、Google はすべてのロケールの内容をクロール・インデックス・ランキングできない可能性がある。理由は2つで、Googlebot のデフォルトのIPアドレスが米国所在に見えること、そしてクローラーが Accept-Language ヘッダを設定せずにHTTPリクエストを送ることである。

ただし、この説明には但し書きが付く。Google は2015年以降、地理分散クロール(米国外に見えるIPアドレスからのクロール)と言語依存クロールの構成も導入しており、公式ドキュメントも「Googlebot は米国ベースのIPアドレスに加えて、米国外を拠点とするIPアドレスでもクロールする」と記している。したがって「Googlebot は米国からしか来ない」と断定するのは不正確である。正確には、locale-adaptive な構成は完全にはクロールされない可能性があり、Google 自身が推奨しているのはロケールごとに別URLを用意し rel="alternate" hreflang で注釈することである

さらに新しい論点として、AIクローラーの挙動がある。技術コンサルタンシー MERJ が2026年3月に公開した検証記事は、主要な検索エンジンのボットが Accept-Language を送らない一方で、多くのAIクローラーはブラウザ的な既定値(en-US,en;q=0.9 など)を送るケースがあると報告している。Accept-Language に基づくリダイレクト構成では、ボットを意図しないロケールへ誘導したりループを生んだりする恐れがある。独立監査を経た研究ではなく実務観測であり、確定した知見としては扱わないが、確認のコストは低い。

最後に期待値の調整を一点。Google は AI 機能について、追加の要件はなく、新しい機械可読ファイルやマークアップ、特別な schema.org の構造化データを作る必要はないと明記している。土台は従来の検索と同じである。したがって hreflang や構造化データを「AI回答に引用されるための施策」と位置づけることには、公開された根拠がない。国際SEOの手当てとしての価値と、AI回答での引用可否は別問題である。

§8 否定すべき6つの通説

ここまでの一次情報と査読研究から、国内で広く流通している言説のうち、根拠が確認できないものを整理する。

通説1「英語サイトを作れば、英語圏のAIに載る」

根拠が薄い。ブランドについてのAI回答の引用のうち 85.7% は自社所有でないサイトを指していた(査読前・ベンダー由来、§5)。自社サイトの英語化はその 14.3% の側を整えることであり、供給構造の大半には届かない。加えて再ランク段階の言語選好(§3)は自社の言語選択とは独立に働く。英語版サイトは有用な手当ての一つである。ただし、AI回答への掲載について必要条件とも十分条件とも実証されていない。第三者による英語の情報だけで企業がAI回答に現れることは論理的にありうるため、上記の 14.3% / 85.7% から必要条件性を導くことはできない。

通説2「意味が同じなら、翻訳しても同じ答えが返る」

誤り。プロンプト言語を変えることは、明示的に文化的視点を要求するのとほぼ同程度に出力を動かす(§2)。同じ問いの言い換えに対する一貫性も、言語によって差がある(§1)。

通説3「現地語で聞けば、西洋中心のバイアスが消える」

支持されない。母語で聞いたほうが整合が悪化したモデルが存在する(§1)。整合を改善しやすいのは言語の切り替えではなく文化的視点の明示だった(§2)。そして地理的な情報格差は、プレイ言語を変えてもほとんど埋まらなかった(§4)。

通説4「hreflang は AI のランキング要因である」

根拠が確認できない。Google は AI 機能について追加要件はないと明記している(§7)。hreflang は国際SEOの推奨事項であり、AI回答での引用可否に効くという公開エビデンスは、本調査の範囲では確認できなかった。

通説5「Organization スキーマを入れれば、エンティティとして認識される」

根拠が確認できない。Google は AI 機能のために特別な構造化データを追加する必要はないと明記している。構造化データが検索機能一般に果たす役割と、「AIがエンティティとして認識することを保証する」という主張は別物である。後者を裏づける公開資料は確認できなかった。

通説6「Wikidata や Wikipedia を編集すれば、AIの回答を制御できる」

飛躍がある。Wikipedia が多くの市場で最多被引用ドメインであることは、査読前・ベンダー由来のデータが示している(§5)。しかし「よく引用される」ことと「編集すれば出力を制御できる」ことの間には距離がある。加えて、自社に関する自己宣伝的な編集は各プロジェクトのコミュニティ方針に反しうる。事実に誤りがある場合の考え方は、AI回答の誤情報を訂正するを参照されたい。

§9 まだ実証されていないこと — 誠実であることが、そのまま差別化になる

本記事が扱う領域では、実証の空白が広い。空白を空白として書くことは、読者が誤った投資判断をするのを防ぐ。以下は、本調査の範囲で公開された一次資料が確認できなかった項目である。

名指しの日本企業について、日本語と英語を統制条件下で比較した公開ベンチマークは、本調査の範囲では確認できなかった。 「日本企業は英語圏のAIで◯%不利」という数値は、本調査の範囲では確認できなかった。

同名企業が国をまたいで混同される率のベンチマークも、確認できなかった。 実務上想定される問題だが、規模を示す公開データは見つからなかった。

AIクローラーの言語別クロールレートを統制した公開データも、見つからなかった。 条件を揃えて示した資料は確認できていない。

「日本語ページを英語化すると、英語のAI回答での引用が増える」という統制実験も確認できなかった。 因果を示すには、他の条件を固定した比較が必要になる。

多言語RAGの知見の多くは Wikipedia を対象としている。 §3で参照したベンチマークは、対象がおおむね Wikipedia に限られることを限界章で明記している。企業情報一般への外挿は検証されていない。

日本の一般人口を対象とした、AI検索エンジン別のシェアも確認できなかった。 アプリのトラフィック比率や企業のAI導入率で代替すると、まったく別のものを測ることになる。これは次節の論点に直結する。

§10 では、どう測るか — 言語と市場を「条件」として明示的に固定する

ここまでの整理から、実務的な結論はひとつに収束する。日本語版と英語版のAI認知は、別個の測定環境として扱う必要がある。

その前に落とし穴をひとつ潰しておきたい。分母の異なる指標を足し合わせないことである。

EU統計局(Eurostat)は、2025年のEU域内において、16〜74歳の 32.7% が生成AIツールを利用したと報告している(用途別では個人利用 25.1%、仕事 15.1%、正規の教育 9.4%)。16〜24歳では 63.8% に上がる。ただしこの指標は「調査前の直近3か月」の利用である。国別の幅も大きく、デンマーク 48.4% からルーマニア 17.8% まで、EU域内だけで3倍近い開きがある。

一方、米国の Pew Research Center は、2026年2月17〜23日に実施した 5,119人の調査で、成人の 49% がAIチャットボットを利用したことがあると報告した(2024年 33%、2023年 23%)。情報検索に使うと答えたのは約4割。ただしこれは「これまでに利用したことがあるか」であり、Eurostat の3か月指標とは別物である。

この2つを並べて「欧米のAI検索シェア」とまとめることはできない。これらは生成AI利用の一般的な指標であって、AI検索の利用率でもエンジン別シェアでもない。日本の一般人口についてのエンジン別シェアは、§9のとおり確認できていない。市場ごとの実態を語るには、指標の定義を揃えるところから始める必要がある。

そのうえで、クロスボーダーの測定設計として押さえるべき条件は3つある。

第一に、言語を条件として明示的に固定する。 「日本語で聞いたとき」と「英語で聞いたとき」を、同じ測定の中で混ぜない。§1・§2が示したとおり、言語は結果を動かす変数であり、変数を固定しない測定は解釈できない。

第二に、市場を条件として明示的に固定する。 §5が示したとおり、引用元の顔ぶれは市場ごとに違う。ある市場での改善が別の市場に転移する保証はない。§6のとおり、規制環境も市場ごとに違う。実務上は最低限、サービスおよびモデル・モード/Web検索の有無/国・地域(IP)/インターフェース言語/ログイン状態と会話履歴/実行日時を揃えて記録し、そのうえで各言語を反復する。条件が記録されていない観測は、後から再現も比較もできない。

第三に、「出てくるか」だけでなく「どう語られ、どこから引かれているか」まで見る。 観測すべき差には、「出現しない」だけでなく、「説明内容が違う」「参照元が違う」「競合との位置づけが違う」「情報の鮮度が違う」といった類型がある。出現の有無だけを数える設計では、これらを捉えられない。

これは業界の測定原則とも整合する。国際的な広報測定のフレームワークでは、ツール・プロンプト・市場・言語・時点を横断して透明に検証することが原則に挙げられている(詳細はAI回答の引用元はどこから来るのかを参照)。市場と言語を、付随条件ではなく測定の設計単位として扱う考え方である。

Vaipm が AI Perception Management(AIPM)と呼んでいるのは、まさにこの層の営みである。AI空間で自社がどう認知されているかを、複数のAIを横断して、内容まで含めて、継続的に把握し管理する。クロスボーダーの文脈では、そこに言語と市場という条件軸が加わる。ただし、日本語条件と英語条件で差が出ても、単発の差だけでは、言語による差か実行ごとの変動かは判別できない。モデル、モード、地域、日時、ログイン状態や会話履歴といった条件を揃え、各言語で反復して測定したうえで、再現する差を「言語条件に関連した認知差」として評価する必要がある。反復とステートレスな計測が要るのは、このためである。

概念の定義はAIPMとは、AI検索最適化の考え方はAIOとはおよびLLMOとはを参照されたい。本記事が示したのは、その手前の前提である。言語が変われば、AIの答えも変わる。 何がどう変わっているかは、言語と市場を条件として固定し、反復して測らなければ分からない。

よくある質問

Q1. 英語版サイトを作れば、英語圏のAIに載るようになりますか。

英語化は有効な手当てのひとつですが、それだけでは十分ではありません。当事者由来のデータではありますが、ブランドについてのAI回答の引用のうち85.7%は、そのブランドが所有していないサイトを指していました。自社所有のサイトは14.3%です。つまり、AIが自社について語る根拠の大半は、自社の外側にあります。加えて、多言語RAGの再ランク段階には英語とクエリ言語を優遇する傾向があり、これは自社がどの言語でページを用意するかとは独立に働きます。英語版の整備は有用な手当ての一つですが、AI回答への掲載について必要条件とも十分条件とも実証されていません。

Q2. 日本語で聞くのと英語で聞くのとでは、AIの答えはどのくらい変わりますか。

自社について日英でどの程度変わるかを示した公開ベンチマークは、本調査の範囲では見つかりませんでした。ただし一般的な機序としては、査読研究で明確に確認されています。10個のLLMを11言語(日本語を含む)で検証した2026年の研究では、プロンプト言語を変えることが、明示的に「◯◯人の視点で答えよ」と指定するのとほぼ同程度に出力を動かしていました。差の大きさは、モデル・話題・言語によって変わります。自社についての実際の差は、自社を対象に測る以外に知る方法がありません。

Q3. 現地語で質問すれば、その国の文脈に合った答えが返ってきますか。

必ずしもそうではありません。2024年のACL論文では、主に英語で学習されたモデルにアラビア語で質問したところ、エジプトの実際の調査回答との整合が悪化しました。逆に、多言語で学習されたモデルにアラビア語で質問すると、米国の調査回答に近づくという逆転も観測されています。2026年の研究では、集計方法によって順位が入れ替わるものの、共通して言えるのは言語を変えるだけより、文化的視点を明示するほうが整合を改善しやすいという点でした。「母語で聞けば現地の文脈になる」は法則ではありません。

Q4. 翻訳の品質を上げれば解決しますか。

翻訳品質の向上は無駄ではありませんが、この問題の中心ではありません。2026年の研究が示したのは、言語だけを変えて生じる変動が人間側の実際の文化差とおおむね直交している——変動は大きいが、方向が現地の実態に近づくとは限らない——ということでした。加えてモデルはオランダ・ドイツ・米国・日本の価値観へ系統的に引き寄せられており、この傾向は別の国を指定してもあまり崩れませんでした。翻訳は出力を変えますが、変える方向まで制御できるわけではありません。

Q5. なぜ日本語で書いた一次情報が、英語の問いで拾われにくいのですか。

複数の段階が重なるためです。まず検索段階で、システムはクエリ言語の文書を優先する傾向があります(49言語ベンチマークで約1.29〜1.64倍)。次に再ランク段階で、2026年のACL論文によれば、既存のリランカーは英語とクエリ言語を系統的に優遇し、他言語で書かれた回答に不可欠な文書を抑圧することがあります。さらに生成段階でも、英語クエリのとき英語ソースを優先的に引用する傾向が報告されています(査読前)。これらが積み重なることで、日本語の一次情報が英語の問いで拾われにくい経路が生じます。ただし「日本企業は不利」と実証されたのではなく、そうなりうる経路が存在するという意味です。

Q6. 無名の日本企業は、英語圏のAIで不利なのですか。

「不利である」と断定できる公開データはありません。ただし、不利になりうる経路を示す査読研究は複数あります。2024年のEMNLP論文は、モデルがグローバルブランドを肯定的な属性と結びつけやすいことを報告しています(ただし実験はすべて英語で実施されました)。COLM 2025の研究は、Global West のエンティティのほうが Global East より当てやすく、この格差は質問の言語を変えてもほとんど埋まらなかったと報告しています。なお、英語ページの新設がこの格差をどう変えるかは、これらの研究では検証されていません。

Q7. hreflang を正しく設定すれば、AIに引用されやすくなりますか。

その効果を裏づける公開エビデンスは、本調査の範囲では確認できませんでした。Google は AI 機能について、追加の要件はなく、新しい機械可読ファイルやマークアップ、特別な構造化データを作る必要はないと明記しています。hreflang 自体は、ロケールごとに別URLを用意する構成とあわせて Google が推奨する国際SEOの手当てであり、正しく設定する価値はあります。ただし、AI回答での引用可否を左右するという意味ではありません。

Q8. Organization スキーマを入れれば、エンティティとして認識されますか。

「認識を保証する」という主張の根拠は確認できませんでした。Google は AI 機能のために特別な schema.org の構造化データを追加する必要はないと明記しています。Organization 構造化データは Google Search が組織情報を理解・識別する助けになりますが、AI回答でのエンティティ認識を保証するという公式根拠は確認できません

Q9. Wikidata や Wikipedia を編集すれば、AIの回答を修正できますか。

飛躍があります。Wikipedia が多くの市場で最多被引用ドメインであることは、査読前・ベンダー由来のデータが示しています(12言語中11言語で首位)。しかし「よく引用される」ことと「編集すれば出力が変わる」ことの間には距離があります。加えて、自社に関する自己宣伝的な編集は各プロジェクトのコミュニティ方針に反しうるため、実務上も推奨できません。

Q10. 市場ごとに引用元が違うというのは、具体的にどういうことですか。

査読前かつベンダー由来の分析ですが、具体例があります。128ブランド・12市場・13言語・167,551件の引用を分類した2026年の公開分析では、Wikipedia が12言語中11言語で最多被引用ドメインでした。ところがポーランドの国内ブランド46社では最多が YouTube で、4つの人材・キャリア系ポータルが637件の引用を供給し、ポーランド語版 Wikipedia の297件のおよそ2倍でした。ある市場で効く第三者言及の構成が、別の市場でそのまま通用するとは限りません。

Q11. EU AI Act 第50条は、日本企業にも関係しますか。

関係しうる、というのが正確な答えです。同法の透明性義務は2026年8月2日から適用され、欧州委員会は2026年7月20日にガイドラインを採択しています。AI Act は、EU市場にAIシステムを提供する者や、その出力がEU域内で用いられる者に及ぶ設計であり、拠点が域外にあることだけで対象外にはなりません。ただし義務の名宛人は主に提供者と利用実施者で、内容も対話であることの告知やAI生成コンテンツのマーキング等に限られます。該当性は個別の事業内容に即した法務判断が必要です。なお本記事は法的助言ではありません。

Q12. すべての国が、AI生成コンテンツへのラベル表示を義務付けているのですか。

いいえ、誤りです。法的性格が法域ごとに大きく違います。EUの AI Act 第50条は拘束力ある規則で2026年8月2日から適用。中国は2025年9月1日施行の部門規則と強制国家標準で、明示ラベルと暗黙ラベルの両方を求めています。一方、日本のAI推進法は推進・政策枠組み法であり、AI生成コンテンツへの横断的なラベリング義務は本調査の範囲では確認されませんでした。米国のFTC規則は消費者レビューという限定分野の規則で、条文自体はAIに特化していませんが、AI生成の偽レビューには適用されます。

Q13. 訪問者の国や言語で内容を出し分けるページは、AI検索に不利ですか。

「不利」と断定はできませんが、注意が必要な構成です。Google は公式に、locale-adaptive なページはすべてのロケールの内容をクロール・インデックス・ランキングできない可能性があると説明し、理由として Googlebot のデフォルトIPが米国所在に見えること、Accept-Language ヘッダを送らないことを挙げています。ただし米国外のIPからもクロールしており、「米国からしか来ない」わけではありません。Google 自身の推奨は、ロケールごとに別URLを用意し rel="alternate" hreflang で注釈することです。

Q14. 結局、何から始めればよいですか。

まず、指標の定義を揃えることをおすすめします。生成AIの利用率ひとつをとっても、EU統計局は「直近3か月の利用」、Pew は「これまでに利用した経験」を測っており、そのまま足し合わせることはできません。そのうえで、自社について言語と市場を条件として固定した測定を始めることです。同じ問いを日本語と英語で投げ、出てくるかどうかだけでなく、どう語られ、どこから引かれているかまで見ます。日本語版と英語版で違う結果が出たとしても、単発の差だけでは言語による差か実行ごとの変動かは判別できません。上記の条件を揃えて各言語で反復測定し、再現する差だけを言語条件に関連した認知差として評価してください。

出典一覧

外部リンクは実装時に rel="noopener noreferrer" を付与すること。すべて2026年8月7日に一次で再取得・確認済み。

A. 一次情報・公式

  1. European Commission, "Guidelines on transparency obligations for providers and deployers of certain AI systems"(Article 50 は2026年8月2日から適用。ガイドラインは2026年7月20日採択。ページ最終更新 2026年7月29日)
    https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/guidelines-transparency-ai-generated-content
  2. European Commission, "Code of Practice on Transparency of AI-generated Content"
    https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/code-practice-ai-generated-content
  3. Cyberspace Administration of China ほか3部門「人工智能生成合成内容标识办法」および強制国家標準 GB 45438-2025(2025年3月14日公布、2025年9月1日施行)
    https://www.chinalawtranslate.com/en/ai-labeling/
  4. 内閣府「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」令和7年法律第53号(2025年6月4日公布・一部施行、9月1日全面施行)
    https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_act/ai_act.html
  5. 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」令和8年3月31日
    https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf
  6. Federal Trade Commission, "Trade Regulation Rule on the Use of Consumer Reviews and Testimonials"(16 CFR Part 465。2024年8月22日 Federal Register 掲載、2024年10月21日発効)
    https://www.federalregister.gov/documents/2024/08/22/2024-18519/trade-regulation-rule-on-the-use-of-consumer-reviews-and-testimonials
  7. Google Search Central, "How Google crawls locale-adaptive pages"(最終更新 2025年12月10日)
    https://developers.google.com/search/docs/specialty/international/locale-adaptive-pages
  8. Google Search Central, "AI features and your website"
    https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features
  9. Eurostat, "32.7% of EU people used generative AI tools in 2025"(2025年12月16日)/"64% of 16-24-year-olds used AI in 2025"(2026年2月10日)。データセット: isoc_ai_iaiu
    https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/w/ddn-20251216-3
    https://ec.europa.eu/eurostat/web/products-eurostat-news/w/edn-20260210-1
  10. Pew Research Center, "Americans and AI 2026: Chatbots, Smart Devices and Views on Impact"(2026年6月17日公表。2026年2月17〜23日実施、n=5,119)
    https://www.pewresearch.org/internet/2026/06/17/americans-and-ai-2026-chatbots-smart-devices-and-views-on-impact/

B. 査読研究

  1. Badr AlKhamissi, Muhammad ElNokrashy, Mai AlKhamissi, Mona Diab. "Investigating Cultural Alignment of Large Language Models." Proceedings of ACL 2024 (Volume 1: Long Papers), pp. 12404–12422.
    https://aclanthology.org/2024.acl-long.671/
  2. Bram Bulté, Ayla Rigouts Terryn. "LLMs and Cultural Values: The Impact of Prompt Language and Explicit Cultural Framing." Computational Linguistics, 2026. DOI: 10.1162/COLI.a.583
    https://direct.mit.edu/coli/article/doi/10.1162/COLI.a.583/134313
  3. Mahammed Kamruzzaman, Hieu Minh Nguyen, Gene Louis Kim. "'Global is Good, Local is Bad?': Understanding Brand Bias in LLMs." Proceedings of EMNLP 2024, pp. 12695–12702.
    https://aclanthology.org/2024.emnlp-main.707/
  4. Rohin Manvi, Samar Khanna, Marshall Burke, David B. Lobell, Stefano Ermon. "Large Language Models are Geographically Biased." Proceedings of ICML 2024, PMLR 235:34654–34669.
    https://proceedings.mlr.press/v235/manvi24a.html
  5. Harsh Nishant Lalai, Raj Sanjay Shah, Jiaxin Pei, Sashank Varma, Yi-Chia Wang, Ali Emami. "The World According to LLMs: How Geographic Origin Influences LLMs' Entity Deduction Capabilities."(Conference on Language Modeling 2025 採録。データセット Geo20Q+)
    https://arxiv.org/abs/2508.05525
  6. Dan Wang, Guozhao Mo, Yafei Shi, Cheng Zhang, Bo Zheng, Boxi Cao, Xuanang Chen, Yaojie Lu, Hongyu Lin, Ben He, Xianpei Han, Le Sun. "All Languages Matter: Understanding and Mitigating Language Bias in Multilingual RAG."(ACL 2026 本会議採録)
    https://arxiv.org/abs/2604.20199
  7. Bryan Li ほか(University of Pennsylvania). "Multilingual Retrieval Augmented Generation for Culturally-Sensitive Tasks: A Benchmark for Cross-lingual Robustness."(BORDIRLINES。49言語・720クエリ・7,436パッセージ・19,916ペア)Findings of the Association for Computational Linguistics: ACL 2025, pp. 4215–4241, ウィーン。DOI: 10.18653/v1/2025.findings-acl.219。※対象がおおむね Wikipedia に限られる旨、著者が限界章で明記
    https://aclanthology.org/2025.findings-acl.219/

C. 査読前・当事者調査(参考値。断定に使用しない)

  1. 査読前|Dayeon Ki, Marine Carpuat, Paul McNamee, Daniel Khashabi, Eugene Yang, Dawn Lawrie, Kevin Duh. "Linguistic Nepotism: Trading-off Quality for Language Preference in Multilingual RAG." arXiv:2509.13930(8言語・6モデル)
    https://arxiv.org/abs/2509.13930
  2. 査読前|Jasmine Rienecker, Katarina Mpofu, Naman Goel, Siddhartha Datta, Jun Zhao, Oscar Danielsson, Fredrik Thorsen. "Auditing Preferences for Brands and Cultures in LLMs."(ChoiceEval)arXiv:2603.18300。※全2,070問が英語で実施されており、プロンプト言語を変える実験は行われていない。日英のプロンプト言語差の証明としては使用しない
    https://arxiv.org/abs/2603.18300
  3. 査読前・当事者|Dmitrij Zatuchin. "How Large Language Models Source Brand Reputation Across Languages and Markets." arXiv:2606.25787。※AI可視性ツールを提供する Rankfor.AI のデータセットを統合したもので、独立した業界センサスではない
    https://arxiv.org/abs/2606.25787
  4. 実務観測(独立監査を経ていない)|MERJ, "Your Accept-Language Redirects Could Be Blocking Search Engines and AI Crawlers"(2026年3月)
    https://merj.com/blog/your-accept-language-redirects-could-be-blocking-search-engines-and-ai-crawlers

本記事について

著者: Vaipm(AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定している)

更新日: 2026年8月7日/出典確認日: 2026年8月7日

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。各法域の規制への適合については、個別に専門家の判断を得てください。また、AIO・GEO・LLMO・AIPM はいずれも公式規格ではなく、実務上の呼称です。

Vaipmの視点

Vaipm が AI Perception Management(AIPM)と呼んでいるのは、AI空間で自社がどう認知されているかを、複数のAIを横断して、内容まで含めて継続的に把握し管理する営みである。クロスボーダーの文脈では、そこに言語と市場という条件軸が加わる。ただし、日本語条件と英語条件で差が出ても、単発の差だけでは、言語による差か実行ごとの変動かは判別できない。モデル、モード、地域、日時、ログイン状態や会話履歴といった条件を揃え、各言語で反復して測定したうえで、再現する差を「言語条件に関連した認知差」として評価する必要がある。Vaipm は、AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測によって測定している。

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