Q1. 商号を変更したら、法人番号も変わりますか。
変わりません。国税庁は「名称や所在地に変更があっても、一度指定された法人番号は変更されない」と明記しています。設立登記法人であれば、法務局で商号変更の登記を行うと、その情報が法務省経由で国税庁へ連絡され、法人番号公表サイトの情報が更新されます。国税庁法人番号管理室への手続は不要です。ただし公表サイトで英語表記を登録している場合は再度登録の手続が必要とされており、登録済みの英文表記は自動では追随しません。
Q2. 合併したら、証券コードはどうなりますか。
証券コード協議会は、上場会社が合併した場合の証券コードは存続上場会社の証券コードと業種になるとし、株式移転等で新設親会社が新規上場する場合は新たに証券コードと業種を割り当てるとしています。なお、平成5年7月以降に上場廃止等で使用されなくなったコードが再利用されることはありませんが、それ以前に削除されたコードは別の会社に割り当てられている場合があります。
Q3. LEIを取得すれば、AIが会社を正しく認識するようになりますか。
そう書ける根拠を、本稿で確認した範囲では確認できませんでした。LEIはISO 17442 に基づき、金融取引に参加する法的主体を識別する20文字のコードで、GLEIFが管理しています。組織再編を記録する Legal Entity Events の枠組みも整備されています。しかし、それがAI回答の主体特定に寄与するかを分離して測定した研究は確認できていません。LEIは金融取引・規制報告のための仕組みです。
Q4. 証券コードとISINと法人番号は、どう使い分けるのですか。
識別している対象が違います。証券コードとISINが識別しているのは銘柄、つまり取引される証券です。法人番号とLEIが識別しているのは法人・法的主体です。同じ法人が複数の銘柄を持つことも、法人が存続したまま銘柄が消滅することもあります。組織再編ではこの二系統が別々に動くため、「会社のID」という一つの概念でまとめようとすると記述できなくなります。
Q5. sameAs に証券コードやLEIを入れてよいですか。
仕様に反します。schema.org の sameAs が値として期待しているのはURLであり、対象の同一性を明確に示す参照Webページ——WikipediaページやWikidataエントリ、公式サイト——を指します。識別子の文字列を置く場所ではありません。識別子には leiCode(ISO 17442 の法的主体識別子)、tickerSymbol(Corporation の取引所取引商品)、identifier(PropertyValue で表現できる汎用の識別子)が用意されています。
Q6. 東京証券取引所は、AI上の企業認知の管理を求めているのですか。
求めていません。IR体制の整備は企業行動規範に基づく義務であり、その整備状況はコーポレート・ガバナンスに関する報告書での開示が必要とされています。しかし具体的な体制の内容は各社の判断に委ねられており、AI上の自社認知の測定・管理が義務づけられているわけではありません。適時開示制度も取引所の規則であって国の法令ではありません。本記事が扱うのは、既存のIR体制の枠組みの中でこの論点をどこまで管理対象とみなすか、という範囲です。
Q7. 同名の別会社があります。何ができますか。
同名法人の存在自体は自社では変えられません。変えられるのは自社側の記述です。法人格を含む正式な商号を使う、英文商号を一貫させる、所在地・設立年・上場市場といった照合可能な属性を併記する、といった対応が考えられます。ただしこれらは「こうすればAIが正しく認識する」という施策ではなく、照合できる材料を置くというところまでです。効果は、複数の呼び方で問う測定で確かめてください。
Q8. 企業名を明示して質問すれば、主体は正しく解決されるのではありませんか。
企業名を明示しても、回答の正確性は保証されません。米国上場17,621社・197,011問を対象とした評価では、企業名と年度の両方を指定した定型プロンプトでなお、正解値との差が10%を超える回答が観測されています。日本の決算短信を用いた研究でも、企業名の有無で同じ開示文へのセンチメント評価が変化しました。★ただしいずれも、主体の同定精度そのものを検証した研究ではありません。 主体が正しく特定されたかどうかはこれらの研究からは判断できず、自社で測る以外に確かめる方法がありません。
Q9. 取り違えはどのくらいの頻度で起きているのですか。
頻度を示す信頼できる公開統計を、本稿で確認した範囲では確認できませんでした。ゆえに本記事では頻度の数字を示しません。参考として、財務QAのベンチマーク研究では、同一質問への8回の再回答がすべて一致する「高確信」の状態でも15〜23%が誤答したと報告されています(2026年7月公開の査読前論文。基盤モデルの評価であり公開AI検索サービスの評価ではありません)。自社について何が起きているかは、自社で測るほかありません。
Q10. どこから着手すればよいですか。
正解表に主体の列を足すところからです。現商号、旧商号とその使用期間、英文商号、略称、法人番号、証券コード、譲渡済み事業とその時期。この基準がなければ、回答を見ても「取り違えている」と判定できません。基準ができたら、現商号・旧商号・略称・英文商号のそれぞれで同じ問いを立て、回答が同じ主体を指しているかを確認します。並行して自社サイトの商号表記の棚卸しを進めてください。この二つは独立に着手できます。