ここが実装の核である。既存の正解表に、5つの列を足す。
6-1. 5つの列
| 列名 | 型・値の例 | 役割 |
status | initial_forecast / revised_forecast / actual / restated / proposed | その数値の状態。§2の4区分に、付議予定を加えたもの |
supersedes | 前の行の row_id。無ければ空 | この行が置き換えた行を指す |
superseded_by | 後の行の row_id。現行版は空 | この行を置き換えた行を指す。空であることが現行版の判定条件 |
effective_from | 日付 | 照合上、この行を現行版として扱い始める日。対象の決算期は fiscal_period が担う |
precedence | 整数(小さいほど優先) | 資料が矛盾したときの優先順位。§4-2で決めた値 |
6-2. 既存の列との関係
前稿の正解表には、announced_date(その値が公表された日)、last_verified(正解表そのものを最後に検証した日)、source_document(出典文書名)がある。新しい列は、これらと役割が重ならない。
| 既存の列 | 答える問い | 本稿が足す列 | 答える問い |
announced_date | この値はいつ公表されたか | effective_from | この行をいつから現行版として扱うか |
last_verified | 正解表を最後に確かめたのはいつか | superseded_by | この行はまだ現行版か |
source_document | どの文書から取ったか | precedence | 文書どうしが矛盾したらどちらを採るか |
| (値の列:決算期・会計基準・通貨・単位・連結範囲) | 何の値か | status | その値はどの状態のものか |
announced_date と effective_from を分ける理由を補足する。訂正開示は、過去の期間の数値を、後の日付で置き換える。 訂正報告書の提出日が2026年8月でも、置き換わる数値の対象期間は2025年3月期でありうる。対象の決算期は fiscal_period が担い、effective_from は「照合上、この行を現行版として扱い始める日」を担う。 公表日だけでは、この2つを分けて表せない。
6-3. CSVでの実装例
前稿と同じく、正解表は表計算ソフトでもCSVでもよい。ここでは列の定義をCSVのヘッダとして示す。画像にしない。 後の工程で機械的に突き合わせるためである。
row_id,question_id,question_ja,expected_value,status,fiscal_period,period_type,consolidation,accounting_standard,currency,unit,continuing_ops,announced_date,effective_from,supersedes,superseded_by,precedence,source_document,source_url,source_page,tolerance,last_verified
R001,Q010,2026年3月期の連結売上高の実績は,1234567,actual,2026-03,FY,consolidated,IFRS,JPY,million,continuing,2026-05-12,2026-05-12,,R004,3,kessan_tanshin,https://example.co.jp/ir/tanshin_2026q4.pdf,p.1,0,2026-08-16
R002,Q011,2027年3月期の連結売上高の会社予想の最新値は,1300000,initial_forecast,2027-03,FY,consolidated,IFRS,JPY,million,continuing,2026-05-12,2026-05-12,,R003,3,kessan_tanshin,https://example.co.jp/ir/tanshin_2026q4.pdf,p.1,0,2026-08-16
R003,Q011,2027年3月期の連結売上高の会社予想の最新値は,1250000,revised_forecast,2027-03,FY,consolidated,IFRS,JPY,million,continuing,2026-08-05,2026-08-05,R002,,4,gyoseki_yoso_shusei,https://example.co.jp/ir/rev_20260805.pdf,p.1,0,2026-08-16
R004,Q010,2026年3月期の連結売上高の実績は,1229000,restated,2026-03,FY,consolidated,IFRS,JPY,million,continuing,2026-08-20,2026-08-20,R001,,1,teisei_hokokusho,https://example.co.jp/ir/teisei_20260820.pdf,p.3,0,2026-08-21
この4行が示していることを読み解く。
Q010(実績)には2つの行がある。R001 は superseded_by に R004 を持つため、現行版ではない
R004 は訂正報告書に由来し、precedence が1で最上位。現行版はこちら
Q011(予想)も2つの行を持ち、R003(修正予想)が現行版
R001 を削除していないため、「AIが1234567と答えた」ときに「訂正開示前の値を答えている」と判定できる
最後の点が、この設計の実利である。古い行を残しているから、誤りの種類が特定できる。 削除していれば、単に「不一致」としか記録されない。
6-4. 判定の細分化
状態の列を持つと、判定の粒度が上がる。前稿の照合では一致・不一致を記録するが、状態の軸を足すと、不一致がさらに分かれる。
- 値も状態も一致: 問題なし
- 値は一致、状態が異なる: 版の取り違え。AIは実在する自社の公表値を答えているが、現行版ではない
- 値が不一致: 従来型の誤り。数値そのものが自社の公表値と一致しない
- 値が不一致で、かつ過去の版とも一致しない: 出所が自社の公表資料ではない可能性
2つ目と4つ目は、対応の方向がまったく違う。版の取り違えは、自社側の情報提示の問題として扱いうる。 現行版が見つけにくい、過年度のページが年度を明示していない、古いページが検索から到達可能なまま残っている、といった原因が自社側にあるなら、自社側で手を打てる。4つ目は、そもそも自社の資料が参照されていない可能性を示す。