ここを厚く書きます。 ここまでの話は、測らなければ自社に当てはまるかどうかが分かりません。
以下の§8-1〜§8-4は、読者が自社で試せる一般的な手順です。当社の製品の機能を説明するものではありません。当社の測り方は§8-6に分けて書きます。
8-1. 既存の道具で見えるもの、見えないもの
最初に、検索の少ない問いの一部が、既存の道具では個別に見えないことを確かめます。
Googleは2022年10月19日のSearch Centralのブログで、Search Consoleの検索パフォーマンスのデータについて、利用者のプライバシーを守るため、一部の問い(匿名化されたクエリ)を表示しないと説明しています。匿名化されるのは、2〜3か月のあいだに数十人を超える利用者から検索されていない問いです。
表7:Search Consoleで、少数の利用者からしか検索されていない問いがどう扱われるか(Google Search Centralのブログ、2022年10月19日)
| 項目 | 扱い |
| 匿名化されたクエリの定義 | 2〜3か月のあいだに、数十人を超える利用者から検索されていない問い |
| 表の行としての表示 | 常に表示されない(APIでも行は無い) |
| グラフの合計 | 含まれる。ただし問いで絞り込むと除かれる |
| 画面から書き出せる行数 | 1,000行まで |
| APIで取り出せる行数 | 1日あたり、サイトと検索の種類ごとに50,000行まで |
つまり、少数の利用者からしか検索されていない問いは、Search Consoleでは匿名化され、表に行として現れません。 検索の少ない問いの一部は、クリックや表示の数としては合計に入っていても、どの問いだったかが分からない、ということです。匿名化の基準は利用者の数で、SEOでいう検索回数そのものではありませんが、両者の向きは重なります。
Google広告のKeyword Plannerのように過去の検索の実績を使う道具では、実績の無い新しい問いを、過去のデータからそのまま観測することはできません(§2-3)。毎日の検索の15%がそれまでに見たことのない問いだとすれば(§2-1)、その部分は、過去の検索回数の上には出てきません。
GoogleのAIの機能についても、Search Consoleには生成AIのパフォーマンスのレポートがあります。Googleは2026年6月3日にこのレポートを発表し、8月31日に全世界のサイトへ展開したとしています。このレポートの切り口は、表示回数、ページ、国、デバイス、日付です。問いの切り口はありません。 見られるものと見られないものは、親記事の「Search Consoleで測れるもの、測れないもの」の節で整理しています。
Search Consoleだけでは、細かい問いを網羅できません。 その不足を補う方法には、顧客や営業の現場で実際に聞かれた問いを集めることもあります。そのうえで、ここでは自分で問いを設計し、回答の側から観測する方法を扱います。
8-2. 二つの軸で問いを組む
表1の四つの区画に、それぞれ問いを置きます。
表8:四つの区画で問いを組み、分かること
| 区画 | 問いの形 | 分かること |
| よく検索される・条件が少ない | 分野の名前で聞く | そもそも候補に入るか。入らないなら誰が入るか |
| よく検索される・条件が多い | 多くの人が打つ定型の長い問い | 一般的な比較や選び方の文脈で、どう扱われるか |
| めったに検索されない・条件が少ない | 検索の少ない社名や製品名だけで聞く | AIが自社を知っているか。何を出典に語るか |
| めったに検索されない・条件が多い | 業種、地域、規模、予算、納期などを重ねて聞く | 条件が増えたときに残るか。何が代わりに出るか |
自社の問いをどの区画に置くかは、先に確かめます。 社名や製品名の検索がどれだけあるかは、Search Consoleで自社名の問いが行として現れるか、Keyword Plannerで数字が出るかで、おおよその見当がつきます。どちらでも見えなければ、尾の側の候補として扱います。社名であること自体は、検索の多さを決めません。
三つ目の区画から始めることを勧めます。 社名だけで聞いたときに、AIが自社について何を言うか。事業の内容を正しく言えるか、別の会社と取り違えていないか、何を出典にしているか。ここで答えが崩れていれば、条件を重ねた問いで自社が挙がらない原因の候補の一つになります。 名指しの問いと、条件で候補を探す問いとでは、検索の起き方や拾われる情報が違いうるので、名指しで崩れても条件の問いで出ることはあります。まず基本の理解を確かめる、という位置づけです。
二つの軸は、片方ずつ動かすと読みやすくなります。
表9:一方の軸を固定して、もう一方を動かす
| 固定するもの | 動かすもの | 問いの対の例(仮) | 差が出たときに考える候補 |
| 条件の数 | 頻度(分野の一般名か、検索の少ない自社の製品名か) | 「勤怠管理の仕組みとは」と「(自社の製品名)とは」 | 分野の文脈では出るが名指しで崩れるなら、自社名で拾われる情報の不足や取り違え |
| 頻度(分野の一般名) | 条件の数(一つずつ足す) | 「勤怠管理の仕組み」に、業種、地域、規模を一つずつ足す | どの条件で出なくなったか。その条件に答える情報の有無 |
条件を一つずつ足す手順の詳しい組み方は、親記事の「条件を一つずつ足して測る」の節に書いています。
8-3. Web検索を使う場合と使わない場合を比べる
§5の研究が示したのは、知られていない対象ほど、検索で補うかどうかで答えが大きく変わる、ということでした。そこで、同じ問いを、Web検索を使う設定と使わない設定で投げ比べるという手順が考えられます。
表10:Web検索の有無で比べたときの読み方(手掛かりであり、原因の特定ではない)
| 検索なし | 検索あり | 考えられること |
| 正しく語る | 正しく語る | モデルが自社についての情報をある程度持ち、拾われる情報とも食い違っていない可能性 |
| 語れない・誤る | 正しく語る | 答えが、その場で拾われる情報に頼っている可能性。対象の尾に近い |
| 正しく語る | 誤る | 拾われた情報が誤っている、古い、別の対象のものである可能性。または、情報は正しくても、選び方や読み取り、組み合わせに失敗している可能性 |
| 語れない・誤る | 誤る | 自社について読める情報がWeb上に少ないか、拾われていない可能性。取り違えも疑う |
表10は、推し量るための手掛かりであって、原因の特定ではありません。 製品によっては、利用者の画面から検索の有無を選べないことがあります。検索の有無のほかにも、モデルの版、地域、言い回しで答えは変わります。開発者向けのAPIでWeb検索をツールとして付けるかどうかを選べる場合でも(§5-4)、付けたときに実際に検索するかどうかはモデルが決めます。検索ありの結果には、何が引用元として示されたかを必ず残してください。 二行目と三行目を見分ける手掛かりは、そこにしかありません。
8-4. 何を記録し、何を固定するか
出てきたか、出てこなかったか。それだけでは足りません。
表11:記録する項目と、固定する条件
| 項目 | なぜ要るか |
| 出てきたかどうか(反復のうち何回か) | 一回だけでは、回答の安定性を評価できない。割合で持つ |
| どう扱われたか | 候補の一つか、条件に合う例か、他社と比べて不利な書かれ方か。順位が明示されない回答もあるため、出てきたかどうかだけでなく、記述の文脈を残す |
| 事実が合っているか | 対象の尾に近いと、名前は出ても中身が誤ることがある |
| 引用元のURLと、その種類 | 自社のページか、大きな百科事典や動画や掲示板のサイトか、業界の小さなサイトか、競合の比較記事か |
| 回答の原文 | 要約して残すと、何が書かれていたかを後で確かめられない。書き換えずに残す |
| 固定した条件 | 反復の回数、過去のやりとりを引き継がないこと、Web検索の有無、AIの製品名と版と測定日、言語と地域、表8と表9のどの問いか |
引用元の種類を記録するのは、§4の観測を、自社の問いの上で確かめるためです。 §4の数字は、よく検索される問いについてのものでした。自社の細かい問いで、引用元が大きなサイトに寄るのか、業界の小さなサイトまで散らばるのかは、測らなければ分かりません。それによって、情報を整える場所の候補が、自社のサイトの中なのか、自社について語っている外部の媒体なのかが変わります。
生成AIの回答は揺らぐので、一度出てこなかったことは出ないことの証明にならず、一度出てきたことも出続けることの証明になりません。固定した条件は、開示してください。 条件を書かずに出した数字は、自社の中でも後で読み返せません。
8-5. 読み方の注意
測った結果から、一足飛びに対策へ進まないでください。
社名で聞いて答えが崩れる場合、原因の候補は、Web上で自社について語られている量が少ないこと、語られている内容が古いこと、似た名前の別の会社と取り違えられていること、などいくつもあります。条件を重ねた問いで自社が出ない場合も、その条件に答える情報が自社の側に無いのか、あっても拾われていないのか、別の媒体が選ばれているのかは、一回の結果からは分かりません。
どちらの場合も、「問いごとにページを作る」は答えになりません。 §3-1のとおり、Googleは、操作を主な目的として検索の変形ごとにコンテンツを作ることをスパムの方針に違反すると明記しています。見るべきは、ページの数ではなく、自社について語られている情報が、Web上に正しく、読める形であるかどうかです。
8-6. 当社の測り方
ここは当社の立場です。
当社、株式会社Vaigate(ヴァイゲート)は、AI上の認知を測定するVaipm(ヴァイピム)を運営しています。Vaipmは、AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定しています。25回という回数は、当社が採用している観測の設計であり、研究から導かれた最適な値ではありません。Vaipmは、対象について4通りの聞き方をします。名指しで聞く。名前を出さずカテゴリで聞く。競合と並べて聞く。固有の施策名で聞く。聞き方によって、AIの答えは変わります。
§8-2と§8-3で示した二つの軸の組み方や、Web検索の有無で比べる手順は、本記事が示す一般的な測り方であり、Vaipmの聞き方と同じものではありません。
8-7. この測定が答えない問い
一つ目。実際の利用者がどんな細かい問いを入力しているかは、この種の測定では分かりません。 測っているのは、決めた問いに対する回答です。
二つ目。自社がどれだけ「知られている」かを、研究と同じ指標で測ることはできません。 §5の研究はWikipediaのページビューで知られ具合を測りましたが、Wikipediaの記事が無い企業では、この指標を同じ形では使えません。回答の側から推し量ることになります。回答の側の測定で分かるのは、設計した問いに対して自社がどう扱われるかであって、検索回数や研究でいう知られ具合そのものではありません。
三つ目。情報を整えたとして、それがAIの回答に反映される時期は、この測定からは分かりません。 反映の時期は、クロール、インデックスの更新、検索の時の取得、製品の側の更新など、複数の要因に左右されえます。