ここは一次の記述だけで組み、表現の強さは原文のまま写します。
2-1. Google
検索ドキュメント「AI features and your website」(最終更新2025年12月10日)は、次のように書いています。
Both AI Overviews and AI Mode may use a "query fan-out" technique — issuing multiple related searches across subtopics and data sources — to develop a response.
「may use」です。 使うことがある、という書き方であって、常に使うとは書かれていません。この限定は落とせません。
一方、製品発表の記事では、限定が付いていません。2025年3月5日の発表記事は次のように書いています。
It uses a "query fan-out" technique, issuing multiple related searches concurrently across subtopics and multiple data sources and then brings those results together to provide an easy-to-understand response.
2025年5月20日の記事も同様です。
AI Mode uses our query fan-out technique, breaking down your question into subtopics and issuing a multitude of queries simultaneously on your behalf.
さらに、同じ記事は Deep Search について次のように書いています。
Deep Search uses the same query fan-out technique but taken to the next level. It can issue hundreds of searches, reason across disparate pieces of information, and create an expert-level fully-cited report in just minutes, saving you hours of research.
数百の検索です。 ただし「can issue」であり、Deep Search という特定の機能についての記述です。
同じ会社が、発表記事では断定し、検索ドキュメントでは「may」を付けています。 書かれている場所と目的が違います。実務で前提を置くときは、より限定の強い検索ドキュメントの側に合わせるのが安全です。
2-2. Microsoft と OpenAI
Microsoft のサポート記事「How web search works in Microsoft Copilot Chat and agents」は、Copilot のチャットでの Web 検索を次のように説明しています。
Copilot generates a Bing search query using a few words from your prompt or any file you've uploaded.
チャットに書いた指示から、数語の Bing の検索語を作る、という説明です。 指示の全体は、ごく短い場合を除いて検索語にしないとも書いています。Web 検索は、新しい情報を取り込んで指示に対してより効果的に推論するためのもの、という位置づけです。
管理者向けの文書(Microsoft Learn・2026年8月18日更新。Microsoft 365 Copilot は Microsoft Copilot に改称と注記)は、指示を解析して Web の情報が役立つ語を見つけて検索語を作ること、役立つときに Bing から取得することがある(may fetch)ことを書き、「Fabrikam strategy」「Fabrikam financials」の二つの検索語ができる例と、作られない例を載せています。Bing に送った検索語は、回答の出典の欄で利用者が見られます。ただし、会話の履歴が検索語の作り方にどう使われるかは、二つの文書には書かれていません。
OpenAI のヘルプ記事「Searching the web with ChatGPT」は、外部の検索事業者を使う場合について次のように書いています。
ChatGPT search typically rewrites your query into one or more targeted queries that it sends those providers.
問いを、的を絞った一つ以上の検索に書き換えることが多い(typically)、という書き方です。 例として、CCR8 を標的とする薬の開発状況を尋ねる問いから、まず「CCR8 immunotherapy drug development 2025」で検索し、結果を見て、より具体的な「CHS-114 conference 2025」を送ることがある(may)と挙げています。記憶の機能が有効なら、保存された記憶を書き換えに使うことがある(may)、とも書いています(AIの記憶とパーソナライズ)。検索そのものも、新しい情報が役立つ問いで自動的に行うことがある(may)という書き方です。
2-3. 発行された検索が、外から見えるかどうか
ファンクエリが発行されることと、それが見えることは別の話です。
Gemini API の公式ドキュメントは、Google検索によるグラウンディングを使ったとき、応答に google_search_call というステップが含まれ、そこにモデルが実行した検索(queries)が入ると説明しています。自分でAPIを呼んだ開発者には、そのとき発行された検索が返ります。
Claude の Web検索ツールのドキュメントも、応答の server_tool_use ブロックに検索の文字列(input.query)が入る例を示しています。
OpenAI の Web検索ツールのドキュメントは、web_search_call.action について 「It will usually (but not always) includes the search queries which were searched.」と、限定付きで書いています。
サイトの運営者の側から見えるものは違います。
Bing Webmaster Tools は、2026年2月10日に「AI Performance」の公開プレビューを案内し、その中の grounding queries を次のように説明しています。
Shows the key phrases the AI used when retrieving content that was referenced in AI-generated answers.
AIの回答で参照されたコンテンツの取得に使われた語句、です。 引用に至らなかった取得は、この範囲に入っていません。Bing は2026年6月16日に、意図の分類(Intents)、語句のまとまり(Topics)、ある語句で表示された引用のうち自サイトが占める割合(Citation Share)、期間の比較(Compare)を、プレビューとして世界で追加しました。
Google の Search Console は、2026年6月3日に生成AIの機能での表示を見るレポートを発表し、2026年8月31日に全世界のすべてのサイトへの展開を終えたと追記しています。見られるのは、AI Overviews や AI Mode での自サイトのURLの表示回数を、ページ・国・デバイス・日付で分けたものです。利用者の問いは含まれていません。したがって、ファンクエリも見えません。
表1:提供元の公式文書における記述と、その強さ
| 出所 | 日付 | 書かれていること | 限定の強さ |
| Google 生成AI向け最適化ガイド | 2026-07-10 最終更新 | クエリファンアウトの定義。同時並行の関連した検索のまとまり。長さの条件は無い | 定義。限定なし |
| Google 検索ドキュメント(AI features) | 2025-12-10 最終更新 | AI Overviews と AI Mode がファンアウトを使うことがある | may use |
| Google 発表記事 | 2025-03-05 | AI Mode がファンアウトを使い、複数の関連検索を同時に発行し、結果をまとめて応答にする | 断定(uses) |
| Google 発表記事 | 2025-05-20 | AI Mode が問いをサブトピックに分け、多数の検索を同時に発行する。Deep Search は数百の検索を発行しうる | 断定(uses)/Deep Search は can issue |
| Gemini API ドキュメント | ― | 応答にモデルが実行した検索が含まれる | 仕様の記述 |
| Claude Web検索ツール ドキュメント | ― | 単純な事実確認は1〜3回、比較や複数の対象を扱う調査は10回以上使うことがある | typically/can use |
| OpenAI Web検索ツール ドキュメント | ― | 実行された検索は、通常は(ただし常にではなく)応答に含まれる | usually (but not always) |
| OpenAI ヘルプ記事(ChatGPT の検索) | 更新日の明示なし | 問いを一つ以上の的を絞った検索に書き換える。記憶を書き換えに使うことがある | typically/may |
| Microsoft サポート記事/管理者向け文書 | ―/2026-08-18 更新 | Copilot は指示から数語の Bing の検索語を作る。指示の全体は、ごく短い場合を除き検索語にしない | 仕様の記述/取得は may fetch |
| Bing Webmaster Tools 発表記事 | 2026-02-10/2026-06-16 | AIの回答で参照されたコンテンツの取得に使われた語句を表示する。6月に意図の分類・語句のまとまり・引用の占有率・期間比較を追加 | 機能の記述。プレビュー |
| Google Search Console 生成AIレポート | 2026-06-03 発表/2026-08-31 全サイトに展開 | AI Overviews と AI Mode での自サイトのURLの表示回数を、ページ・国・デバイス・日付別に表示する。問いは表示されない | 機能の記述 |
2-4. 何本出るのかについて、提供元が書いていること
Claude の Web検索ツールの公式ドキュメントは、回数について次のように書いています。
Simple factual queries typically use 1–3 searches; comparative or multientity research can use 10 or more.
単純な事実確認なら1〜3回、比較や複数の対象を扱う調査なら10回以上になることがある。 開発者が max_uses を決める目安ですが、問いの性質によって回数が大きく変わることを、提供元自身が書いている例として読めます。
同じドキュメントは、最近の出来事や現在の値が要るもの、変わりうる対象については検索し、確立した事実や数学や創作については検索せずに答える、と整理しています。検索そのものが起きないことがあります。
Anthropic が2025年6月13日に公開した技術記事は、複数のサブエージェントを使う調査の仕組みについて、次のような数字を挙げています。
Simple fact-finding requires just 1 agent with 3-10 tool calls, direct comparisons might need 2-4 subagents with 10-15 calls each, and complex research might use more than 10 subagents.
費用についても書いています。
agents typically use about 4× more tokens than chat interactions, and multi-agent systems use about 15× more tokens than chats.
分解には費用がかかります。 同記事は、この構成が向くのは互いに依存しない複数の方向を同時に追う問いで、同じ文脈の共有が要る領域や、依存関係の多い領域は向かないと書いています。
なお、この記事は Anthropic 自身の調査システムの設計についてのものです。各社の製品が内部でどの検索方式を使っているかは、公開された一次の記述の範囲を超えるため、本記事では扱いません。
2-5. 確認できなかったもの
Perplexity の Pro Search のヘルプ記事は、取得が拒否され、確認できませんでした。 Perplexity が公表している内容については、本記事では触れません。
確認できなかったことを、「そう書かれていない」とは書きません。 確認できなかった、というだけです。