実務ガイド

ロングクエリマーケティングとは|条件の多い問いに、答えは届いているか

2026-09-24更新 2026-09-28読了目安 23分

著者: 株式会社Vaigate(AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定するVaipmを運営)

この記事のポイント

ロングクエリマーケティングは実務での言い方で、公式の規格ではありません。AI Modeの問いは通常検索の3倍という数字と、短い問いも増えているという反証を並べ、条件の数という見方は本記事の分析として分けて示します。Search Consoleで測れる範囲と、AIの回答での扱われ方の測り方も解説します。

結論サマリー

「ロングクエリマーケティング」は、実務での言い方です。公式の規格でも、標準化された用語でもありません。 この記事も、その前提で読んでください。近い言葉にAIO、GEO、LLMOがありますが、これらも用法が一様ではなく、公的な標準規格の名前ではありません(§1-1)。

本記事は、この言い方を次の意味で使います。

条件の多い問いに答える情報を整え、それがAIの回答に届いているかを測るマーケティング。

「長い」を文字数の話だと受け取ると、すぐに反証にぶつかります。Google自身が、AI Modeで短い問いも長い問いも、どちらも増えていると書いているからです。そこで本記事は、長さではなくひとつの問いが抱える条件の数という観点で読み解きます。ただし、これは本記事の分析です。 Googleが公表しているのは問いの長さであって、条件の数を測った数字ではありません。

この記事が並べるのは、別々に観測された、いくつもの出来事です。AI Modeへの入力、声と画像による検索、クリックせずに終わる検索、Google検索の生成AI機能が問いを分解して探す仕組み、そして以前からあった問いの多様さ。これらは同じ現象を同じ指標で測ったものではありません。 当社はこれらに共通する向きがあると解釈していますが、その解釈は見出しを分けて書きます(§8-1)。

その意味をどう受け取るかは、読む方に委ねます。本記事が引き受けるのは、並べるところまでと、自社の現在地を測る手順を示すところまでです。

1. 別々に観測された、いくつものこと

最初に見取り図を置きます。

表1:本記事が並べる観測
観測の対象公表・観測されていること本記事で扱う章
AI Modeへの入力米国で、AI Modeの検索は通常の検索の3倍の長さ。短い問いも長い問いも増えている§2
入力の形米国の検索の6件に1件以上が音声か画像を使う(GoogleがAI Modeの知見として挙げた数字。検索全体の割合とは確定できない)。Gemini Liveの会話は文字の対話より長い§3
検索結果の使われ方クリックせずに終わる検索の割合が高い。AIの要約があるとリンクのクリックが減る§4
Google検索の生成AI機能の探し方関連する複数の問いを作って探すことがある(クエリファンアウト)§5
背景:問いの表現の多様さ毎日の検索のうち15%が、それまでに見たことのない問い(2019年と2022年の公表値)§6

これらは、同一の機能や同一の指標を測ったものではありません。 それぞれ異なる製品、利用行動、検索処理について観測されたものです。材料の多くはGoogleの公表で、ほかに調査機関とベンダーの観測が入っています。

条件の数という観点でこれらを結びつけているのは、本記事の分析です。各章では、公表されている事実と、本記事の読み方を分けて書きます。

本記事は、起きたことだけを書きます。 これからどうなるかは書きません。予測は、この種のページが長く残ることと相性がよくないからです。

なお、条件の多い問いにまつわる論点のうち、個別に立てるべきものは別の記事で扱います(§1-2)。本記事は全体の見取り図です。

1-1. 呼び名について

AIO、GEO、LLMOという呼び名は、使う人によって指す範囲が違います。公的な標準規格の名前ではありません。

ただし、どれも同じ扱いというわけではありません。GEO(Generative Engine Optimization)という語については、2024年の国際会議KDDに採択された査読付きの論文があります。Googleの生成AI向けのガイドも、AEOとGEOを一般に使われる語として紹介したうえで、Google検索の立場からは、生成AI検索への最適化も検索体験への最適化であり、SEOのままだと説明しています。

「ロングクエリマーケティング」には、そうした論文やガイドの裏づけもありません。本記事が使う意味は、冒頭に書いた一文に限ります。

1-2. このシリーズの各論

個々の論点は、次の各論で扱っています。

このシリーズの各論
記事扱う問い
クエリファンアウト(query fan-out)とはAIは一つの問いをどう複数の関連検索に広げて探すのか
ロングテールとロングクエリの違い細かい問いは、検索とAIの回答でどう扱われているか
AIの記憶とパーソナライズ同じ問いでも答えは変わるのか、企業の見え方をどう確かめるか
画像検索・音声検索とAI写真や声で問うと、AIには何が伝わるのか
AIエージェントのショッピングとは条件を渡して探し、比べ、買うとき、企業の情報はどう読まれるのか
ニッチ戦略とAI検索AIは小さな企業を引用するのか — 分散の観測と偏りの観測から
ロングクエリ対策AI検索で条件の多い問いに答えるために、何を整え、どう確かめるか

2. AI Modeへの入力で、問いが長くなった

2-1. Googleが公表している数字

Googleは2026年5月19日に公開した記事で、米国におけるAI Modeの利用について次のように書いています。

the average AI Mode search is triple the length of a traditional Search query

AI Modeでの検索は、平均で通常の検索の3倍の長さである、ということです。

ここで、三つの限定を先に置きます。

第一に、これは米国の数字です。 同記事は米国を対象としています。日本語での問いの長さを実測した一次のデータは、本記事の調査範囲では見つかりませんでした。そもそも日本語に語数という単位をそのまま当てられません。

第二に、算出の方法は公開されていません。 何をもって長さとしたかが示されていないため、この数字を他の調査と並べて比較することはできません。

第三に、これはAI Modeの中の話です。 検索全体が長くなったという一次の証拠ではありません。

なお、Googleは2025年9月9日に日本語でのAI Modeの提供開始を発表した記事でも、「AI モードの初期のユーザーは、従来の検索クエリの 2 倍から 3 倍の長さの質問をしていた」と書いています。同じ趣旨の説明ですが、数字は「2倍から3倍」です。この記事は日本語での提供を始めた当日のもので、「初期のユーザー」がどの国・どの言語の利用者かは示されていません。母数も算出方法も公開されていないため、本記事は日本の利用者の実測としては扱いません。

2-2. 同じ記事が、逆のことも書いている

ここが重要です。 同じ記事には、次の一文もあります。

we're seeing growth in both short and long queries in AI Mode

短い問いも、長い問いも、どちらも増えている。 Google自身がそう書いています。

つまり、短い問いが長い問いに置き換わったのではありません。 増えたのは幅です。「検索は長くなった」と一般化すると、この一文と衝突します。

2-3. 本記事の分析 — 長さではなく、条件の数で読む

ここからは、公表された事実ではなく本記事の分析です。

Googleが測ったのは問いの長さです。条件の数ではありません。 長さの単位も公開されていません。

それでも本記事が条件の数という観点をとるのは、長い問いには、業種、地域、予算、時期のような条件がいくつも含まれている場合があるからです。「長くなった」とだけ言うと、短い問いも増えているという一文と衝突します。条件の数で見れば、条件の少ない短い問いと、条件の多い長い問いが並んで増えていることを、一つの見方の中に置けます。

ただし、この見方は、Googleの数字が条件の増加を示しているという意味ではありません。 長い問いが、条件の多い問いであるとはかぎりません。前置きや言い換えで長くなる問いもあります。一般の検索について、問いが抱える条件の数を測った一次のデータを、本記事は見つけていません。

近いものとして、科学文献の検索についての観測が一つあります。Allen Institute for AIの研究者ら(Haddadほか、2026年2月、未査読のプレプリント)は、AIを使う科学文献の検索の道具(Asta)に寄せられた問い258,935件(利用者が同意したもの、2025年2〜8月)を分析し、比較のため従来型の学術検索サイトSemantic Scholarの問いも調べています。Semantic Scholarの問いを2022年と2025年で比べると、条件(constraint)を1つ以上含む問いは7%から10%に、関係(relation)を1つ以上含む問いは65%から78%に増え、平均の長さは4.8語から6語超に伸びた、と報告しています。

ただし、これは研究者による科学文献の検索の観測であり、一般の検索に広げることはできません。 条件や関係の判定は言語モデルによる分類で、Semantic Scholarの比較に使った問いの件数を本記事は確認していません。著者は、AIを使う道具に触れたことで利用者の期待が変わった可能性が高い(likely)と述べていますが、その因果を確かめたものではありません。同じ研究は、慣れた利用者の間でもキーワード型の問いが残るとも書いています。

3. 声と画像で問うようになった

同じ記事は、入力の形についても書いています。次の一文は、同記事が挙げた「米国でのAI Modeについての主な知見」の一覧の中にあります。

More than one in six searches in the U.S. now use voice or images, with image searches growing over 40% month-over-month

Googleは、米国のAI Modeについての知見の一覧の中で、米国の検索の6件に1件以上が音声か画像を使っていると書いています。この一文だけからは、Google検索全体の割合か、AI Modeの中の割合かを確定できません。本記事は、これをGoogle検索全体の割合としては扱いません。

同じ一文にある「画像による検索が前月比で40%以上伸びた」という記述も、同じ扱いとします。Google検索全体の画像検索の伸びか、AI Modeの中の画像検索の伸びかは、この一文だけからは確定できません。

なお、Alphabetの2025年第4四半期の決算説明(2026年2月4日)では、CEOのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)が「Nearly one in six AI Mode queries are now non-text, using voice or images」と述べています。こちらはAI Modeの問いの中の割合で、6件に1件「近く」です。5月の記事の「6件に1件以上」とは表現も時点も異なり、同じ指標を指しているかどうかは確定できません。

これが条件の数に関わりうるのは、入力の形が変わると、問いの形も変わりうるからです。文字を打つときは短く済ませても、話すときには文になりやすい場合があります。 画像を添えれば、その画像が示していた条件が、言葉を使わずに問いへ入ることもあります。

「この写真のものと似ていて、もっと安くて、今日受け取れるもの」という問いは、文字だけで組み立てるより、画像と声のほうが早く言えます。条件が増えたのは、入力のしやすさが変わったからだと読むこともできます。 ただし、これも本記事の読み方です。Googleの数字は、音声や画像を使う検索の割合を示すもので、その問いが抱える条件の数を示すものではありません。

また、この数字は米国のもので、AI Modeについての知見として挙げられています。Google検索全体での割合かどうかや、日本での内訳は、この記事の範囲では確認できていません。

写真や声で問うとAIに何が伝わるのかは、画像検索・音声検索とAIで扱っています。

3-1. 声の場合、長くなっているのは「会話」である

声については、もう一つ公表されている数字があります。Googleは2025年5月20日の記事で、Gemini Liveについて次のように書いています。

the conversations are five times longer than text-based conversations on average

文字での対話にくらべて、会話が平均で5倍長い、ということです。

ここは慎重に読む必要があります。 長いとされているのは会話であって、ひとつひとつの問いではありません。何をもって長さとしたか、単位も方法も公開されていません。「声で問うと問いが5倍長くなる」と読み替えることはできません。

条件の数という観点から言えるのは、次のことまでです。やりとりが続くなら、条件は一度に言い切られるのではなく、途中で追加されうる。 最初の問いが短くても、あとから前提が足されることはあります。ただし、会話が長い理由が、同じ話題への条件の追加なのか、別の話題に移ったからなのかは、公表された数字からは分かりません。

3-2. ここまでで言えること、言えないこと

表2:入力について、一次情報で言えること
言えること言えないこと
米国のAI Modeでの検索は、平均で通常の検索の3倍の長さ検索全体が長くなった
Googleが公表しているのは問いの長さである問いが抱える条件の数が増えた
短い問いも長い問いも、どちらも増えている短い問いが長い問いに置き換わった
GoogleがAI Modeの知見として、米国の検索の6件に1件以上が音声か画像を使うと書いているこれがGoogle検索全体の割合である。日本でも同じ割合である
Gemini Liveでは会話が平均5倍長い声で問うと問いが5倍長くなる

右の列を書かないことが、この記事の書き方です。 右の列のうち、本記事が観点として使っているもの(条件の数)は、§2-3のとおり分析として分けています。

4. 回答の中で完結するようになった

次は、検索結果がどう使われているかの観測です。

SparkToroのランド・フィッシュキン(Rand Fishkin)が2026年6月9日に公表した分析では、米国で2026年1〜4月に行われたGoogle検索の68.01%がクリックなしで終わっています(Similarwebのクリックストリームのパネル)。同じ記事は、2024年の値を60.45%としています(Datosのパネル)。

ただし、この二つは別々のパネルの数字です。 著者自身が「these aren't the same users or devices」と書き、利用者も端末も同じではなく、属性も完全には一致しないと断っています。2024年から2026年への差は、同じ母集団を追った変化ではありません。

Pew Research Centerが2025年7月22日に公表した調査は、米国の成人900名が2025年3月に行ったGoogle検索(68,879件)を、実際のブラウジングの記録から分析しています。AIによる要約が表示されたとき、従来の検索結果のリンクがクリックされたのは訪問の8%で、要約が無いときは15%でした。要約の中のリンクがクリックされたのは1%です。要約が表示されたページでは26%がそこでブラウジングを終えており、要約の無いページの16%より多くなっています。

サイトの側から見た推計もあります。Similarweb(ベンダー)は、世界の上位1,000サイトについて、2025年6月にAIのプラットフォームから送られた訪問を11.3億件超、Google検索からの訪問を1,910億件と推計しています。AIからの訪問は前年同月比で357%増えましたが、規模ではまだ小さいということです。Cloudflareは2025年8月29日、自社のネットワークでの観測として、AIのクローラーがページを取得する量に比べて、人がリンクをたどって訪れる数は非常に少ないと報告しています。いずれも、問いの形の変化を測ったものではありません。

この数字の背景はAIOの全体像を扱う記事で扱っています。

4-1. 本記事の仮説 — 絞り込みは問いの側へ移るか

ここからは仮説です。

リンク先で条件を絞り込まないなら、条件は最初の問いに入れることになる、という流れが考えられます。検索結果を見て、サイトへ行って、絞り込み条件を選ぶ手順が省かれるほど、その絞り込みを問いの文へ前倒しする誘因になりうる、と本記事は考えます。

ただし、クリックなしで終わる検索のデータは、この因果を直接測ったものではありません。 クリックせずに終わる検索には、答えがその場で足りた場合も、検索をやり直した場合も、満足せずに離れた場合も含まれます。Pewの26%も、そこで閲覧を終えたことを示すだけで、問いが細かくなったかどうかは分かりません。

この仮説が正しいとすれば、絞り込みの作業が問いの側に移り、移った先で答えられなければ、その条件は満たされないまま回答が作られることになります。仮説が正しいかどうかを確かめる材料は、本記事の範囲にはありません。

5. 探し方の側 — Google検索の生成AI機能は、問いを分解して探すことがある

この章の話は、Google検索の生成AI機能(AI OverviewsとAI Mode)について、Googleが公式に説明したものです。 他社のAI製品の内部の方式について、本記事は一般化しません。

5-1. Googleが公開している定義

Googleの生成AI向けの最適化ガイド(最終更新2026年7月10日)は、クエリファンアウトを次のように定義しています。

A set of concurrent, related queries generated by the model to request more information and fetch additional relevant search results to address the user's query

Google検索の生成AI機能で、利用者の問いに答えるために、モデルが関連する複数の問いを同時に作って投げる、ということです。

別のページ(AI features and your website、最終更新2025年12月10日)は、AI OverviewsとAI Modeがこの手法を用いることがある(may use)と書いています。いつもそうするとは書かれていません。

したがって、Google検索の生成AI機能が条件の多い問いを受け取ったとき、それがそのまま一つの検索語として扱われるとはかぎりません。分解されて、別々に探されることがあります。

クエリファンアウトそのものは、クエリファンアウト(query fan-out)とはで扱っています。

この仕組みの詳細はAIが何を見て自社を語るかを扱う記事で扱っています。Googleの公式ドキュメントでの記載はAI回答に情報がいつまで残るかを扱う記事に収録しています。

5-2. 分解されるなら、ページを増やせばよいのか

操作を目的にページを増やすのであれば、答えは「いいえ」です。 Google自身が書いています。同じガイドから引きます。

While it might be tempting to create separate content for every possible variation of how people might search (for example, by focusing on other queries that people have asked, or fan-out queries), doing so primarily to manipulate rankings or generative AI responses in Google Search violates Google's scaled content abuse spam policy.

人が検索しうるあらゆる変形ごとに別々のコンテンツを作ることは、主として順位やGoogle検索の生成AIの回答を操作する目的で行う場合、大量生成によるスパムの方針に違反する、と明記されています。

条件が付いている点に注意してください。利用者の役に立つ別のページを作ること自体が禁じられているわけではありません。 禁じられているのは、操作を主な目的として変形ごとに量産することです。

したがって、条件の多い問いへの対応は、ページの数の話ではありません。 問いが抱える条件に対して、答える情報が実際にあるかどうかという、中身の話です。

5-3. AI向けに完全に別系統のランキングを前提にする根拠はない

同じガイドは、生成AIの機能について次のようにも書いています。

our generative AI features on Google Search are rooted in our core Search ranking and quality systems

Google検索の生成AI機能は、既存の検索のランキングと品質の仕組みに根ざしている、ということです。同じガイドは、検索拡張生成(RAG)という方式で、既存のランキングの仕組みを使って関連するページを取り出すとも説明しています。

この説明からは、Google検索の生成AI機能について、既存の検索と完全に切り離された別系統のランキングを前提にする根拠はない、と言えます。ただし、回答を作る途中に、情報の取り出しや選び方、文の生成といった処理が加わらないという意味ではありません。そこまでは、この記述からは分かりません。

5-4. サイト所有者の側でできる設定

情報が届くかどうかを考えるうえで、もう一つ公式の事実があります。Googleでは、サイト所有者が、自社サイトのリンクと内容をAI OverviewsやAI Modeなどの生成AI機能に含めるか除外するかを、Search Consoleで設定できます。 Googleは2026年8月31日に、この設定を全世界のサイトへ展開したとしています。

Googleは、この設定が検索の他の部分に影響する順位や掲載の信号には使われない、と説明しています。自社の情報が生成AI機能に出てこないときは、まずこの設定を確かめる、という順番になります。

6. 背景 — 問いの表現は、以前から多様だった

この章は、ここまでの章と性質が違います。新しく起きたことではなく、以前からあったことを扱います。

先に断っておきます。この章で扱う数字は問いの側の数字です。答える側の情報が増えたことや、細かくなったことを示すものではありません。答える側の情報の細かさが変わったかどうかを示す一次の資料を、本記事は確認できていません。

6-1. 毎日の検索の15%は、見たことのない問い

Googleは2019年10月25日の記事で、次のように書いています。

15 percent of those queries are ones we haven't seen before

毎日見る検索のうち15%は、それまでに見たことのない問いである、ということです。

この数字が示すのは、問いの表現の多様さが、生成AIの機能が検索に入る前から大きかったということです。

ただし、この数字から「条件の細かい問いが大量にあった」とは言えません。 見たことのない問いになる理由は、条件の組み合わせのほかにも、新しい出来事、新しい語や固有名詞、表記の揺れ、言い換えなど、いくつも考えられます。また、「それまでに見たことがない」は、「一度しか検索されない」という意味でもありません。

細かい問いが検索とAIの回答でどう扱われているかは、ロングテールとロングクエリの違いで扱っています。

6-2. 公表値は、2019年も2022年も15%

ここは反証の側にも数えるべきです。

Googleは2022年2月3日の記事でも、次のように書いています。

In fact, 15% of searches we see every day are entirely new.

少なくとも公表値では、2019年も2022年も15%です。 比率が上がったとは書かれていません。増加を示す証拠にはなりません。

一方で、丸められた二つの時点の値が同じだからといって、その間ずっと同じだったとも言えません。言えるのは、公表値の範囲では増加が示されていない、というところまでです。

つまり、「新しい問いが増えたから、いま対応が必要になった」という書き方はできません。

6-3. この章から言えること

本記事がこの章で言えるのは、問いの表現の多様さは以前から大きかった、というところまでです。

そこに、§5のとおり、Google検索の生成AI機能が問いを分解して探すことがあると公式に説明されています。§4のとおり、クリックせずに終わる検索の割合も高く観測されています。これらをつないで「もともとあった多様な問いに対して、答えの届き方が変わった」と読むのは、本記事の解釈です。 同じ指標で確かめられた事実ではありません。

6-4. この章で扱っていないもの

本記事の登録簿には、この章で扱いきれていない動きがいくつも残っています。そのうち次の三つは、各論で扱っています。

対話型の入力面そのものの変化と、体験談の取り込みは、まだ扱っていません。 推測で埋めることはしません。確認できたものから、別の記事で扱います。

7. 反証 — ここまでの話が弱いところ

ここを飛ばして読まないでください。 本記事の読み方に対して、反対側の材料が複数あります。

表3:反証と、その出所
反証内容出所
平均はまだ短い米国・デスクトップの2025年5〜7月のクリックストリームで、通常のGoogle検索の問いは平均4.0語(同じデータでAI Modeは7.22語)ベンダー分析(Semrush・原典で確認)
GoogleのAI Modeに到達した検索はまだ少ない米国・2026年1〜4月のパネルで、Google検索のうちAI Modeに到達したのは0.34%。AI検索全体の数字ではないベンダー分析(SparkToro/Similarwebのパネル・原典で確認)
クリックなしの比率の比較は、別々のパネル68.01%(2026年)と60.45%(2024年)は、利用者も端末も異なるパネルの値ベンダー分析(SparkToro・原典で確認)
Google自身が両方と言っている短い問いも長い問いも増えている(§2-2)Google公式
新しい問いの比率が増えたとは言えない公表値は2019年も2022年も15%。増加を示す証拠にはならない(§6-2)Google公式
日本語の実測がない問いの長さを日本語で測った一次データが見つからない確認できず
引用は第三者の媒体に偏るAI検索は、ブランド自身の媒体より第三者の権威ある媒体を引く方向へ偏っているとする研究がある未査読のプレプリント
計測の側が揺れていたSearch Consoleで、2025年5月13日から2026年4月27日まで表示回数が正しく記録されない不具合があった。クリック数は影響を受けていないGoogle公式

表の「出所」は、出所の種類を示すものです。証拠の強さの順位ではありません。 Googleの公表は、製品を運営する会社自身の数字であり、算出方法が示されていないものがあります。Pewの調査は、実際のブラウジングの記録を観察したものです。原典に当たれたことと、証拠として強いことは別の話です。本記事が区別しているのは、原典で直接確認できたか、できなかったかです。

一つ目は、Google自身が両方と言っていることです。本記事が§2で引いたのと同じGoogleの記事が、「短い問いも増えている」と書いています。都合のよい一文だけを引くことはできません。

二つ目は、新しい問いの比率が増えたとは言えないことです。§6-2のとおり、公表値は2019年も2022年も15%です。この記事が並べたもののうち、いくつかは以前からあったものです。

三つ目は、GoogleのAI Modeに到達した検索の割合がまだ小さいことです。SparkToroの同じ分析では、2026年1〜4月の米国で、Google検索のうちAI Modeに到達したのは0.34%でした。これはGoogleのAI Modeの数字であって、AI検索全体の数字ではありません。 Google以外のAI製品での利用は含まれていません。§2のAI Modeの問いの長さの数字は、この0.34%の中で起きていることです。

四つ目は、クリックなしの比率の比較が、別々のパネルによることです。§4で書いたとおり、68.01%と60.45%は同じ母集団の値ではありません。上昇の幅をそのまま変化の大きさとして読むことはできません。

五つ目は、計測の側が揺れていたことです。Search Consoleでは、2025年5月13日から2026年4月27日まで、記録の不具合で表示回数が正しく報告されていませんでした。表示回数に連動するクリック率と平均掲載順位も影響を受けています。当時保存した値や、補正されていないデータを使ってこの期間をまたぐ比較をすると、不具合の影響が混入しうるため、注意が必要です。いまSearch Consoleに表示される過去の値がどこまで直されているかは、本記事では断定しません。

六つ目は、通常の検索の問いの平均が、まだ短いことです。Semrushが2025年7月30日に公表した分析では、米国のデスクトップで2025年5月1日から7月5日までに行われた約6,900万のGoogle検索のセッション(クリックストリーム)で、通常の検索の問いは平均4.0語、AI Modeの問いは平均7.22語でした。AI Modeで長い問いが増えていても、通常の検索の問いの平均は数語です。 なお、この分析でのAI Modeと通常の検索の比はおよそ2倍で、Googleが公表した3倍とは一致しません。対象の期間や端末が異なり、Googleは長さの算出方法を公開していないため、二つの数字をそのまま比べることはできません(§2-1)。本記事は、どちらが正しいかを判定しません。

加えて、AI検索がブランド自身の媒体より第三者の権威ある媒体を引く方向へ偏っている、とする研究があります。未査読のプレプリントですが、条件に答える情報を自社で整えても、それが引かれるとはかぎらないことを示唆しています。

そして、日本語で問いの長さを測った一次のデータを、本記事は見つけられませんでした。 無いと断定するものではありません。見つけられなかった、という記載です。日本語での提供開始を伝えたGoogleの記事の「2倍から3倍」も、日本の利用者の数字とは読めません(§2-1)。本記事が引いた数字は、断りのないかぎり米国のものです。

7-1. 反証を並べたうえで、何が残るか

これらを踏まえてもなお残るのは、§1の見取り図に並べた個々の観測と、それらに共通の向きがあるという当社の解釈までです。 解釈は§8-1に分けて書きます。それ以上のことは、本記事は主張しません。

反証のほうが強いと判断されるなら、それも一つの読み方です。 本記事は、反対側の材料を隠して結論へ運ぶ書き方をしていません。判断に必要なものを、両方置いています。

どちらの判断をとるにしても、自社の状況を知る材料は一つではありません。測定はそのうちの一つです(§8-4)。

8. 並べると、何が見えるか

ここまでの観測を、もう一度まとめます。

米国のAI Modeでは、問いの平均の長さが通常の検索の3倍で、短い問いも長い問いも増えています。Googleは、AI Modeの知見として、米国の検索の6件に1件以上が音声か画像を使うと書いています(検索全体の割合とは確定できません)。クリックせずに終わる検索の割合は高く、AIの要約があるとリンクのクリックは減っています。Google検索の生成AI機能は、問いを分解して探すことがあると公式に説明されています。そして、見たことのない問いは、以前から毎日の検索の15%ありました。

8-1. 当社の解釈 — 共通する向き

ここは事実の要約ではなく、当社の解釈です。

当社は、これらに共通する向きがあると解釈しています。条件を抱えた問いが、そのままAIの回答の入口に届く場面が広がっている、という向きです。

ただし、同一の現象を同じ指標で測ったものではありません。 問いの長さ、入力の形、クリックの有無、検索処理の説明、見たことのない問いの比率は、それぞれ別の指標です。この解釈を裏づける単一の数字はありません。

8-2. 別々の観測であることの意味

これらは、同一の機能や同一の指標を測ったものではなく、それぞれ異なる製品・利用行動・検索処理について観測されたものです。材料の多くはGoogleの公表で、Pewは調査機関、SparkToroはベンダーによる観測です。

相互に同一の機能ではありません。 ただし、材料の多くが同じ会社の公表である以上、互いに無関係だとも言えません。別々の観測が並んでいることは、解釈の材料にはなりますが、解釈が正しいことの証明にはなりません。

8-3. それでも、断定はしません

ここから何を引き出すかは、読む方に委ねます。「だから条件の多い問いへの対応をすべきだ」と本記事は書きません。そう書ける根拠を、本記事は持っていないからです。

§7の反証は消えていません。通常の検索の問いの平均はまだ数語にとどまり、GoogleのAI Modeに到達した検索の割合はまだ小さく、日本語での実測は見つかっていません。 これらが残っているうちに「対応すべきだ」と書けば、それは主張ではなく、売り文句になります。

本記事が引き受けたのは、別々に観測されたことを、同じ表に並べて見せるところまでです。

8-4. 測定は、判断材料の一つ

断定しない立場をとったうえで、実務の話をします。

自社の現在の扱われ方を直接知りたい場合、測定は一つの判断材料になります。 世の中がどちらへ向かうかは分かりませんが、いま自社がAIの回答の中でどう扱われているかは、測れば記録として残せます。

判断の材料は測定だけではありません。対象とする顧客が実際にAIを使っているか、Search Consoleの数字(§10-5)、顧客への聞き取り、費用と効果の見積もりなども材料になります。測定の結果をどう使うかは、それらと合わせて決めることです。

9. 当社の立場 — 測定の設計

ここからは当社の立場です。 見出しで分けているのは、ここが事実の要約ではないからです。

当社、株式会社Vaigate(ヴァイゲート)は、AI上の認知を測定するVaipm(ヴァイピム)を運営しています。当社が測定を設計するときに置いている考え方を、本記事の論点に沿って書きます。

第一に、聞き方を変えて測ります。 社名だけを聞く問いでは、名前を出さずに聞かれたときに自社がどう扱われるかが分かりません。聞き方によって、AIの答えは変わります。

第二に、同じ問いを繰り返して測ります。 生成AIの回答は、同じ問いでも毎回同じにはなりません。一度の結果は、状態の証明になりません。

第三に、条件を固定して、その条件を開示します。 反復の回数、過去のやりとりを引き継がないこと、複数のAIにまたがること、言語。これらを書かずに出された数字は、読み手が解釈できません。

第四に、ページの数を増やす方向へは設計していません。 §5-2のとおり、Googleは、主として順位や生成AIの回答を操作する目的で問いの変形ごとにコンテンツを作ることを、スパムの方針に違反すると明記しています。測るのは、ページの数ではなく、回答の中での扱われ方です。

9-1. この設計が答えていない問い

正直に書きます。 この設計で分かるのは、当社が設計した問いに対して、いま自社がどう扱われているかまでです。

分からないことが三つあります。

一つ目。改善したとして、その改善がAIの回答に反映されるまでにどれだけかかるかは、設計に織り込めていません。 Googleは、クロールには数日から数か月かかりうると説明しています。取得と再取得の間隔は提供者ごとに違い、公表されている範囲も一様ではありません。

二つ目。回答の中での扱われ方が、事業の成果にどう結びつくかは、この測定では分かりません。 測っているのは、AIの回答の中での扱われ方です。そこから先は、別の指標の領分です。

三つ目。実際の利用者がどんな問いを入力しているかは、この測定では分かりません。 測っているのは、決めた問いに対する回答です。

測定が答える範囲を広げて書かないことも、設計のうちだと考えています。

10. 自社は、どの粒度の問いで出ているか

ここからは、読者が自社で試せる一般的な手順です。当社の製品の機能を説明するものではありません。当社の測り方は§10-7に分けて書きます。

条件の多い問いに答えるために何を整え、どう確かめるかは、ロングクエリ対策で扱っています。

10-1. 四通りの聞き方で測る

表4:問いの組み方と、分かること
聞き方例分かること
社名を出して聞くその会社は何をしているか自社を語るとき、何を出典にしているか
社名を出さずに聞くその分野で選ばれている会社候補に挙がるか。挙がらないなら誰が挙がるか
競合と並べて聞く数社を条件で比べる比較の文脈でどの出典が使われるか
条件を重ねて聞く業種、規模、地域、予算、納期などを同時に指定する条件が増えたときに残るか、出てこなくなるか

四つ目が、本記事の主題に直結します。 社名を出せば出てくる会社が、条件を三つ重ねた問いでは出てこない、ということはありえます。その差は、原因を探す出発点になります。 ただし、原因の候補は一つではありません(§10-3)。差があることだけから、対応ができているかどうかは判定できません。

10-2. 条件を一つずつ足して測る

四つ目の聞き方は、一度に全部の条件を入れるより、条件を一つずつ足していくほうが読み取れます。

表5:条件を足していく測り方
段階問いの形読み取ること
条件なしその分野の会社そもそも候補に入るか
条件を1つその分野で、特定の業種に強い会社どの条件を足したところで出てこなくなるか
条件を2つさらに規模や地域を足す出てこなくなった条件について、原因の候補を洗い出す手掛かり
条件を3つ以上実際に投げられる形に近づける残るなら、何が出典として引かれているか

どの条件を足したときに出てこなくなったかを見れば、原因の仮説を立てる手掛かりになります。 条件をすべて入れた問いで出てこなかった、という結果だけでは、手掛かりそのものが得られません。

ただし、この手順は原因を特定するものではありません。生成AIの回答は、語順や言い回し、条件どうしの組み合わせ、そのときの検索結果によっても変わります。条件を一つずつ足す手順は、原因の候補を絞り込む助けにとどまります。

10-3. 何を記録するか

出てきたか出てこなかったか、だけでは足りません。出典として何が引かれたかまで記録してください。 自社のページなのか、第三者のまとめなのか、競合の比較記事なのか。

条件を重ねたときに出典が入れ替わる場合、原因の候補はいくつも考えられます。

  • その条件に答える情報が、自社側に無い、または足りない
  • 情報はあるが、検索の結果で上位に出ていない
  • 情報の取り出しや出典の選び方の段階で、別の媒体が選ばれている
  • 自社の情報が古いものとして扱われている
  • 外部の権威ある媒体が優先されている(§7で引いた研究が報告している偏り)

逆に、条件を足しても自社のページが引かれ続けるなら、その条件については、少なくともその時点では情報が届いています。

記録すべきものは三つです。 出てきたかどうか、何番目あたりの位置で扱われたか、そして出典として何が引かれたか。三つ目を落とすと、上のどの候補に当たるかを考える手掛かりが無くなります。

10-4. なぜ一回では足りないか

生成AIの回答は揺らぎます。同じ問いを同じ日に投げても、返ってくる文は同じになりません。

一度測って出てこなかったことは、出ないことの証明にはなりません。 逆に、一度出てきたことも、出続けることの証明にはなりません。一回の結果は、状態ではなく、そのときの一つの出力です。

したがって、測るときは次の条件を固定し、記録しておく必要があります。

  • 反復の回数 — 何回投げたか。一回なら、それは観測ではなく試行です。回数が少ないほど、結果から読み取る割合の不確かさは大きくなります
  • 過去のやりとりを引き継がないこと — ログインの状態や履歴が残っていると、自社を測っているのか、測っている人の履歴を測っているのか区別がつきません。ただし、履歴を引き継がなくても、地域や検索のインデックス、提供者の側での変更といった条件まで消えるわけではありません
  • どのAIで測るか — AI検索のサービスどうしで、引く媒体の幅、情報の新しさ、言語をまたいだ安定性、言い回しへの反応が大きく異なるとする研究があります(§7で引いた未査読のプレプリント)。複数のAIで測るかどうかは、何を知りたいかによります
  • 使った製品とモデルの名前、測定日、回答を取得した日時 — 同じ製品でも、時期によって中身が変わりえます
  • Web検索を使う設定かどうか、地域 — 検索を伴うかどうかで、出典の引き方が変わりえます
  • 言語 — §7のとおり、日本語での実測は本記事の範囲では見つかっていません。自社で測るなら、測った言語を書いてください
  • 問いの設計 — §10-1の四通りと、§10-2の条件の足し方

そして、これらを開示してください。 条件を書かずに出された数字は、自社の中でも一年後に読み返せません。競合との比較にも、前後の比較にも使えません。

10-5. Search Consoleで測れるもの、測れないもの

Googleについては、公式の数字もあります。Search Consoleの「Generative AI performance report」は、AI OverviewsとAI Modeで自社サイトへのリンクが表示された回数を、ページ、国、日付、デバイスごとに見られるレポートです。Googleは、2026年8月31日に全世界のサイトへ展開したとしています。

表6:Search Consoleの生成AIのレポートで測れるもの、測れないもの
知りたいことこのレポートで
自社サイトへのリンクが、AI OverviewsとAI Modeで実際の利用者に表示された回数測れる
その内訳(ページ、国、日付、デバイス)測れる
利用者が入力した問い測れない(レポートに表示されない)
問いごとに、自社の名前が回答の中でどう語られたか測れない
競合と並べて聞かれたときの扱われ方測れない
Google以外のAI製品での扱われ方測れない(対象はGoogle検索の生成AI機能)
リンクを伴わない、名前だけの言及測れない(対象はリンクの表示)

加えて、Googleは、Search Labsの実験は含まないこと、同じサイトの結果が一つの生成AI機能に二つ出た場合は1回として数えること、データの表示には一定の表示回数が必要なことを説明しています。

10-6. 二つの測り方は、見ているものが違う

Search Consoleの数字は、Googleが自社サイトについて記録した、実際の利用者への表示回数です。本記事の手順や当社の測定は、決めた問いに対するAIの回答を記録するもので、実際の利用者がどんな問いを入力したかも、実際に何回表示されたかも分かりません。

見ているものが違うため、どちらかが他方を置き換えるものではありません。 Google検索の生成AI機能でのリンクの表示を知りたいならSearch Consoleを、問いの形を決めてAIの回答の中での扱われ方を知りたいなら§10-1〜§10-4の手順を使う、という分け方になります。両方を並べて見ることもできます。

10-7. 当社の測り方

ここは当社の立場です。

Vaipmは、AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定しています。

ここでいうステートレスとは、ログインの状態や過去のやりとりを引き継がずに測るという意味です。地域や検索のインデックスなど、回答に関わりうるすべての状態を取り除くことまでは意味しません。

25回という回数は、当社が採用している観測の設計です。研究から導かれた最適な値ではありません。25回の結果から読み取る割合には、試行の回数に応じた不確かさがあります。一回の出力よりは傾向を読みやすくなりますが、確定した状態を示すものではありません。

Vaipmは、対象について4通りの聞き方をします。名指しで聞く。名前を出さずカテゴリで聞く。競合と並べて聞く。固有の施策名で聞く。聞き方によって、AIの答えは変わります。

§10-1〜§10-2で示した「条件を重ねて聞く」手順は、本記事が示す一般的な測り方であり、Vaipmの聞き方と同じものではありません。自社がAIの回答の中でどう扱われているかを、聞き方を変えて繰り返し記録すること。 当社が測定で引き受けているのは、そこまでです。

11. まとめ

「ロングクエリマーケティング」は実務での言い方であり、公式の規格ではありません。 本記事はこれを、条件の多い問いに答える情報を整え、それがAIの回答に届いているかを測るマーケティング、という意味で使いました。

Googleが公表しているのは、米国のAI Modeで問いが長くなっていること、そして短い問いも増えていることです。条件の数という見方は、本記事の分析です。 GoogleがAI Modeの知見として挙げた音声や画像による入力、クリックせずに終わる検索、Google検索の生成AI機能が問いを分解して探すことがあるという説明、以前からあった問いの多様さ。これらは別々の観測で、共通する向きがあると読むのは当社の解釈です。

反証も残っています。通常の検索の問いの平均はまだ数語にとどまり、GoogleのAI Modeに到達した検索の割合はまだ小さく、クリックなしの比率の比較は別々のパネルによるもので、日本語での実測は見つかっていません。片面だけを見て動くだけの材料は、まだありません。

対応はページの数ではありません。 主として順位や生成AIの回答を操作する目的で問いの変形ごとにコンテンツを作ることは、Googleがスパムの方針に違反すると明記しています。

この記事が並べたもののうち、いくつかは以前からありました。 見たことのない問いは前から毎日の検索の15%あり、公表値の範囲では増えたとは言えません。

自社の現在の扱われ方を知りたいなら、条件を固定して測ることは、判断材料の一つになります。 Google検索の生成AI機能でのリンクの表示はSearch Consoleで見られます。問いを決めてAIの回答の中での扱われ方を見るには、聞き方を変えて繰り返し測る方法があります。

世の中がどちらへ向かうかを、本記事は書きませんでした。書けるだけの根拠を持っていないからです。 いま自社がどう扱われているかは、測れば記録として残せます。それをどう使うかは、ほかの材料と合わせて決めることです。

12. よくある質問

Q1. 「ロングクエリマーケティング」は正式な用語ですか。

いいえ。実務での言い方です。公式の規格でも標準化された用語でもありません。AIO、GEO、LLMOも用法が一様ではなく、公的な標準規格の名前ではありません。なお、GEOという語については、2024年の国際会議KDDに採択された査読付きの論文があります(§1-1)。

Q2. 検索は長くなったのですか。

一次の情報で言えるのは、米国のAI Modeでの検索が平均で通常の検索の3倍の長さである、というところまでです。同じ記事が、短い問いも長い問いも増えていると書いています。 日本語での提供開始の発表にも「2倍から3倍」という同じ趣旨の説明がありますが、母数は公開されておらず、日本の利用者の実測とは読めません(§2-1)。検索全体が長くなったという一次の証拠は、本記事の調査範囲では見つかりませんでした。また、Googleが測ったのは長さであり、条件の数ではありません。科学文献の検索では、従来型の検索でも問いが長くなり、条件を含む問いが増えたとする観測がありますが、未査読のプレプリントで、一般の検索には広げられません(§2-3)。

Q3. 想定される問いごとにページを作るべきですか。

Googleは、人が検索しうる変形ごとに別々のコンテンツを作ることについて、主として順位や生成AIの回答を操作する目的で行う場合はスパムの方針に違反すると明記しています(§5-2)。利用者の役に立つ別のページを作ること自体が禁じられているわけではありません。本記事は、ページの数ではなく、条件に答える情報があるかどうかを見ることを勧めます。

Q4. AI向けの別のランキングに最適化する必要がありますか。

Googleは、Google検索の生成AI機能が既存の検索のランキングと品質の仕組みに根ざしていると説明しています(§5-3)。既存の検索と完全に切り離された別系統のランキングを前提にする根拠はありません。Google以外のAI製品の内部の方式については、本記事は一般化しません。

Q5. 日本でも同じことが起きていますか。

分かりません。 本記事が引いた数字は、断りのないかぎり米国のものです。日本語で問いの長さを測った一次のデータは、本記事の調査範囲では見つかりませんでした。

Q6. 何から始めればよいですか。

自社の現在の扱われ方を知りたいなら、条件を重ねた問いで自社が出てくるかを、条件を固定して繰り返し測る方法があります(§10-1〜§10-4)。出てこなかった場合も、原因の候補は一つではありません(§10-3)。測定は判断材料の一つであり、ほかの材料と合わせて使うものです(§8-4)。

Q7. Search Consoleの生成AIのレポートで足りますか。

知りたいことによります。Search Consoleでは、AI OverviewsとAI Modeで自社サイトへのリンクが表示された回数を、ページ、国、日付、デバイスごとに見られます。一方で、利用者が入力した問いは表示されず、Google以外のAI製品や、リンクを伴わない名前だけの言及は対象外です。見ているものが違うため、目的に応じて使い分けます(§10-5、§10-6)。

Q8. 声や画像で検索すると、問いが抱える条件は増えるのですか。

一次の情報で言えるのは、GoogleがAI Modeの知見として「米国の検索の6件に1件以上が音声か画像を使う」と書いていること、Gemini Liveでは会話が文字の対話より平均5倍長いこと、までです。前者は、Google検索全体の割合かAI Modeの中の割合かを確定できず、本記事は検索全体の割合としては扱いません。話すときには文になりやすい場合があり、条件が途中で追加されうる、というのは本記事の読み方です。Googleの数字は、問いが抱える条件の数を示すものではありません。長いとされているのも会話であって、ひとつひとつの問いではありません(§3、§3-1)。

Q9. クリックせずに終わる検索は増えたと言えますか。

SparkToroの分析では、米国で2026年1〜4月に行われたGoogle検索の68.01%がクリックなしで終わっています。2024年の値は60.45%ですが、この二つは利用者も端末も異なる別々のパネルの数字で、同じ母集団を追った変化ではありません。Pewの調査では、AIによる要約が表示されたとき、従来の検索結果のリンクがクリックされたのは訪問の8%で、要約が無いときは15%でした。絞り込みが問いの側へ移るという見方は、本記事の仮説にとどまります(§4、§4-1)。

Q10. 「毎日の検索の15%は見たことのない問い」は、条件の細かい問いが多いという意味ですか。

いいえ、そこまでは言えません。この数字が示すのは、問いの表現の多様さが以前から大きかったということです。見たことのない問いになる理由は、条件の組み合わせのほかにも、新しい出来事や新しい語、表記の揺れなど、いくつも考えられます。また、公表値は2019年も2022年も15%で、増加を示す証拠にはなりません(§6-1、§6-2)。

Q11. 自社サイトを、Googleの生成AI機能に出さないようにできますか。

Googleでは、サイト所有者が、自社サイトのリンクと内容をAI OverviewsやAI Modeなどの生成AI機能に含めるか除外するかを、Search Consoleで設定できます。Googleは2026年8月31日に、この設定を全世界のサイトへ展開したとしています。この設定は、検索の他の部分に影響する順位や掲載の信号には使われない、とGoogleは説明しています。自社の情報が生成AI機能に出てこないときは、まずこの設定を確かめる、という順番になります(§5-4)。

Q12. 一度測って自社が出てこなければ、AIに扱われていないということですか。

そうとはかぎりません。生成AIの回答は揺らぎ、同じ問いを同じ日に投げても、返ってくる文は同じになりません。一度出てこなかったことは、出ないことの証明にはならず、一度出てきたことも、出続けることの証明にはなりません。測るときは、反復の回数、過去のやりとりを引き継がないこと、使った製品と測定日、言語、問いの設計などを固定し、記録しておく必要があります。出てこなかった場合も、原因の候補は一つではありません(§10-3、§10-4)。

13. 出典

  1. Google「How AI Mode is changing and expanding the way people search」2026年5月19日(米国対象)。AI Modeでの検索が平均で通常の検索の3倍の長さであること、短い問いも長い問いも増えていること、米国でのAI Modeについての主な知見の一覧の中で、米国の検索の6件に1件以上が音声か画像を使い、画像検索が前月比40%以上伸びたとしていること(Google検索全体の割合かAI Modeの中の割合かは、この一文からは確定できない)。長さの算出方法は公開されていない。https://blog.google/products-and-platforms/products/search/ai-mode-us-insights/
  2. Google Search Central「Optimizing your website for generative AI features on Google Search」最終更新2026年7月10日。クエリファンアウトの定義、検索しうる変形ごとにコンテンツを作ることと大量生成によるスパムの方針の関係(主として順位や生成AIの回答の操作を目的とする場合)、生成AIの機能が既存の検索のランキングと品質の仕組みに根ざしている旨、検索拡張生成(RAG)で既存のランキングの仕組みを使う旨、AEOとGEOの語についての説明。https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/ai-optimization-guide
  3. Google Search Central「AI features and your website」最終更新2025年12月10日。AI OverviewsとAI Modeがクエリファンアウトを用いることがある(may use)旨、クロールには数日から数か月かかりうる旨。https://developers.google.com/search/docs/appearance/ai-features
  4. Rand Fishkin「In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click」SparkToro、2026年6月9日。米国・2026年1〜4月のGoogle検索の68.01%がクリックなしで終わったこと(Similarwebのクリックストリームのパネル)、2024年の値60.45%(Datosのパネル)、両者は利用者も端末も同じではないとする著者の注記、同期間にAI Modeに到達した検索が0.34%であること。ベンダーによる分析。https://sparktoro.com/blog/in-2026-less-than-one-third-of-google-searches-still-send-a-click/
  5. Pew Research Center「Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results」2025年7月22日。米国の成人900名の2025年3月のブラウジング記録(Google検索68,879件)の分析。AIによる要約が表示されたとき従来の検索結果のリンクがクリックされたのは訪問の8%(要約が無いときは15%)、要約の中のリンクがクリックされたのは1%、要約が表示されたページで閲覧を終えたのは26%(要約の無いページでは16%)。https://www.pewresearch.org/short-reads/2025/07/22/google-users-are-less-likely-to-click-on-links-when-an-ai-summary-appears-in-the-results/
  6. Google「Understanding searches better than ever before」2019年10月25日。毎日の検索のうち15%が、それまでに見たことのない問いである旨。https://blog.google/products/search/search-language-understanding-bert/
  7. Google「Gemini App: 7 updates from Google I/O 2025」2025年5月20日。Gemini Liveでの会話が、文字での対話にくらべて平均5倍長い旨。単位および算出方法は公開されていない。https://blog.google/products-and-platforms/products/gemini/gemini-app-updates-io-2025/
  8. Google「How AI powers great search results」2022年2月3日。毎日の検索のうち15%がまったく新しい問いである旨。https://blog.google/products-and-platforms/products/search/how-ai-powers-great-search-results/
  9. Google Search Console ヘルプ「Data anomalies in Search Console」。2025年5月13日から2026年4月27日まで、記録の不具合により表示回数が正しく報告されず、クリック率と平均掲載順位も影響を受けたこと。クリック数は影響を受けていないこと。不具合は解消済み。https://support.google.com/webmasters/answer/6211453?hl=en
  10. Mahe Chen, Xiaoxuan Wang, Kaiwen Chen, Nick Koudas「Generative Engine Optimization: How to Dominate AI Search」arXiv 2509.08919、2025年9月10日(未査読のプレプリント)。AI検索が、ブランド自身の媒体より第三者の権威ある媒体へ偏っているとすること、AI検索のサービスどうしで、引く媒体の幅、情報の新しさ、言語をまたいだ安定性、言い回しへの反応が大きく異なるとすること。https://arxiv.org/abs/2509.08919
  11. Google Search Console ヘルプ「Generative AI performance report (Search)」。AI OverviewsとAI Modeでの自社サイトへのリンクの表示回数を、ページ、国、日付、デバイス別に見られること。2026年8月31日に全世界のサイトへ展開した旨。利用者が入力した問いは表示されないこと、Search Labsの実験を含まないこと、同じサイトの結果が一つの機能に複数出た場合は1回として数えること、表示には一定の表示回数が必要なこと。https://support.google.com/webmasters/answer/16984139?hl=en
  12. Google Search Console ヘルプ「Search generative AI control」。サイトのリンクと内容をAI Overviews、AI Mode等の生成AI機能に含めるか除外するかをSearch Consoleで設定できること。2026年8月31日に全世界のサイトへ展開した旨。検索の他の部分に影響する順位や掲載の信号には使われない旨。https://support.google.com/webmasters/answer/16908024?hl=en
  13. Pranjal Aggarwal, Vishvak Murahari, Tanmay Rajpurohit, Ashwin Kalyan, Karthik Narasimhan, Ameet Deshpande「GEO: Generative Engine Optimization」arXiv 2311.09735(KDD 2024 採択)。GEOという語についての査読付き論文。https://arxiv.org/abs/2311.09735
  14. Luke Harsel「Google AI Mode's Early Adoption and SEO Impact」Semrush、2025年7月30日。米国・デスクトップの2025年5月1日〜7月5日のGoogle検索のセッション約6,900万件(クリックストリーム)の分析。通常の検索の問いの平均が4.0語、AI Modeの問いの平均が7.22語であること。ベンダーによる分析。https://www.semrush.com/blog/google-ai-mode-seo-impact/
  15. Alphabet「Alphabet Fourth Quarter 2025 Earnings Conference Call」トランスクリプト、2026年2月4日。CEOのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)が、AI Modeの問いの6件に1件近くが音声か画像を使う非テキストの問いであると述べた旨。https://s206.q4cdn.com/479360582/files/doc_events/2026/Feb/04/2025_Q4_Earnings_Transcript.pdf
  16. Google 日本「Google 検索の AI モードを日本語で提供開始します」2025年9月9日。日本語でのAI Modeの提供開始の発表。AI Modeの初期のユーザーが従来の検索クエリの2倍から3倍の長さの質問をしていた旨。対象の国・言語、母数、算出方法は示されていない。https://blog.google/intl/ja-jp/products/explore-get-answers/ai-mode-search/
  17. Dany Haddad ほか(Allen Institute for AI)「Understanding Usage and Engagement in AI-Powered Scientific Research Tools: The Asta Interaction Dataset」arXiv 2602.23335、2026年2月26日(未査読のプレプリント)。利用者が同意した問い258,935件(2025年2〜8月)の分析。比較対象のSemantic Scholarでは、2022年から2025年に、条件を1つ以上含む問いが7%から10%、関係を1つ以上含む問いが65%から78%、平均の長さが4.8語から6語超になった旨。https://arxiv.org/abs/2602.23335
  18. David F. Carr「AI Referral Traffic Winners By Industry」Similarweb、2025年7月29日。世界の上位1,000サイトについての推計で、2025年6月にAIのプラットフォームからの訪問が11.3億件超、Google検索からの訪問が1,910億件、AIからの訪問が前年同月比357%増。ベンダーによる推計。https://aisearch.similarweb.com/blog/ai-referral-traffic-winners/
  19. João Tomé「The crawl-to-click gap: Cloudflare data on AI bots, training, and referrals」Cloudflare、2025年8月29日。同社のネットワークでの観測として、AIのクローラーのページ取得量に比べて、利用者がリンクから訪れる数が非常に少ない旨。https://blog.cloudflare.com/crawlers-click-ai-bots-training/

本記事の出典は、1から13を2026年9月23日に、14を2026年9月24日に、15を2026年9月25日に、16から19を2026年9月28日に、いずれも一次情報で直接確認した。日本語での問いの長さに関する一次データは、本記事の調査範囲では確認できなかった。

Vaipmの視点

Vaipmは、AI上の認知を、複数のAIへの合計25回のステートレス計測で測定します。名指しで聞く、名前を出さずカテゴリで聞く、競合と並べて聞く、固有の施策名で聞く、の4通りの聞き方で、自社がAIの回答の中でどう扱われているかを記録します。

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