部署別のAI認知管理とは、部署ごとに相手(候補者、投資家、法人の購買担当、記者、取引先や消費者)がAIに投げる問いを想定し、その問いへのAIの答えの中で自社がどう説明されているかを測って管理することです。 本記事は、人事・IR・営業マーケティング・広報PR・法務の5部署について、相手がAIをどう使い始めているかを、調査の数字と調査の条件をそろえて並べます。
数字は部署ごとに中身が違います。日本の就活生419人の調査では、就職活動の情報収集に生成AIを「よく使う」「ときどき使う」が合わせて76.2%、企業研究の段階で使ったが37.9%でした。日本の個人投資家の調査では、株式投資中の個人投資家の31.8%が銘柄探しにAIを使っていました。日本の法人の購買に関わる1,573人の調査では、生成AIやAI検索が購買判断に与える影響が増えたと答えた人が41.6%でした。記者については日本に限った数字が見つからず、世界の記者1,899人の調査で、仕事にAIを使ったことがないと答えたのは21%でした。
ここまでの4部署には、相手のAI利用を示す数字があります。法務は違います。 取引先や消費者が会社をAIで調べている、という直接の数字は見つかりませんでした。法務について示せるのは、生成AIの利用者が答えをどう確かめているかの調査と、海外のニュースの答えで報告された問題の種類までです。総務省の白書では、日本の生成AIの利用者のうち、答えが正しいかを他の方法で確認していると答えたのは38.2%でした(複数回答)。取引先や消費者が、会社についてのAIの答えを事実として受け取った割合は分かりません。
相手の多数がAIで会社を調べている、と言える数字はありません。 全体の割合か、AIの利用者に限った割合かも、調査ごとに違います。言えるのは、4部署それぞれで、相手の一部がAIを判断の材料に加え始めている、というところまでです。それでも、相手の一部が判断の前にAIの答えに触れうる以上、AIが自社をどう説明しているかは、部署ごとに確かめる問題になります。相手が違えば、判断に要る情報が違うからです。
この記事で分かること
- 人事・IR・営業マーケティング・広報PRの4部署で、相手がAIで何をしているかを示す調査の数字と、その調査主体・時期・対象・人数
- 法務では、相手が会社をAIで調べているという直接の数字が無いことと、代わりに示せる間接の根拠
- 日本の数字と海外の数字の区別、そして見つからなかった数字
- AIの答えが外れたときに、部署ごとに何が起きうるか
- 同じ会社でも、相手の問いしだいでAIの説明が変わる理由
- 部署ごとの問いの作り方、言い回しの組、言及率と整合率の意味
- この記事の数字と測定から、言えないこと
対象読者
人事・IR・営業マーケティング・広報PR・法務の責任者と、AI認知管理を社内で説明する立場の方を想定しています。自社の部署の外でも同じことが起きているかを、数字の条件まで含めて確かめたい方に向けた総論です。各部署の詳しい話は、節ごとに紹介する各論の記事に送ります。
最初に置く数字
| 部署 | 相手 | 数字(何の割合か) | 調査主体・公表 | 時期 | 対象・人数 | 地域 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 人事 | 候補者(就活生) | 就活の情報収集に生成AIを「よく使う」34.4%+「ときどき使う」41.8%(合計76.2%は本記事の計算)。企業研究の段階で使った37.9%(母数の明記なし) | ナイル株式会社(ナイルのSEO相談室調べ)・2026年4月28日 | 2026年3月25〜30日 | 2026〜2028年卒の就活経験のある学生419人 | 日本 |
| IR | 個人投資家 | 株式投資中の個人投資家のうち、銘柄探しにAIを利用31.8%(20代58.9%。母数の人数は確認できず) | シエンプレ株式会社/デジタル・クライシス総合研究所・2026年9月1日 | 公表文に記載なし | 全国の20〜60代の個人投資家。事前スクリーニング8,000人、本調査260人 | 日本 |
| 営業マーケティング | 法人の購買担当 | 生成AIやAI検索が購買判断に与える影響が増えた41.6%(全体1,573人が母数)。AIの利用者1,155人のうち候補の洗い出しに使った50.3% | HubSpot Japan(実施はマクロミル)・2026年7月16日 | 2026年6月11〜16日 | 従業員50名以上の企業でBtoB商材の購買に関わった1,573人 | 日本 |
| 広報PR | 記者 | 仕事でAIを使ったことがない21%。使う理由のうち調べもの・事実確認43%(母数の明記なし) | Cision・2026年5月 | 2026年1〜2月 | 北米・欧州中東アフリカ・アジア太平洋の記者1,899人 | 海外(日本が含まれるかは確認できず) |
| 法務 | 取引先・消費者 | 直接の数字なし(間接の数字のみ)。相手が会社をAIで調べている数字は見つからなかった。間接の数字として、日本の生成AIの利用者のうち、生成内容が正しいかを「他の方法で確認している」38.2%、気を付けていることは「特にない」24.6%(複数回答) | 総務省『令和8年版 情報通信白書』・2026年7月 | 2026年1〜2月 | 日本は15〜69歳の1,236人(米国・ドイツ・中国は各624人)。38.2%などは、そのうち生成AIサービスの利用者が母数 | 日本(国別の値) |
表1の数字は、互いに比べられません。 問いの形、母数、対象の選び方が調査ごとに違うからです。全体を母数にした割合と、AIの利用者に限った割合も混ざっています。並べたのは、部署ごとに「相手がAIを使っている」と言える範囲を、条件まで含めて見えるようにするためです。法務の行だけは、相手のAI利用を示す数字ではありません。